まどかぴあ舞台創造プログラム プロデュース公演
「浮足町アンダーグラウンド」
制作発表記者会見
平成28年6月13日(月)大野城まどかぴあ 大ホール
地域の演劇文化の普及育成事業を行ってきた大野城まどかぴあが、開館20周年を機に、新たに挑戦・発信することを目的に行うプロデュース公演。
今までに「キンドー芝居」や「子どもミュージカル」「リンクシアター」「九州戯曲賞リーディング公演」など、演劇分野に力を注ぎ、今回のプロデュース公演には、180人の応募がありました。
応募者の中から選ばれた14名の俳優と、作家:中島かずき、演出:内藤裕敬、俳優:池田成志を迎えて制作発表が行われました。
稽古は8月から始まり9月の本番へ向かう。また、初の巡回公演も行います。
林田 スマ(はやしだ すま)(大野城まどかぴあ 館長)
20周年、夢と希望と感謝とエネルギーをすべてこめて、9月がとっても楽しみです。素晴らしい舞台にしていきたい。八代、宮崎へこの舞台が広がっていくことも大喜びしています。
小磯 上(こいそ ほずる)(公益財団法人大野城まどかぴあ 文化芸術振興課文化芸術振興担当 係長)
3年前から種をまいて、時間をかけて育ててきた取り組みが9月に実を結びます。
「地方の公共ホールでも本格的な演劇公演が創れる」ということをたくさんの方に知っていただきたいです。
中島 かずき (なかしま かずき)
中島です。今日はありがとうございます。僕は福岡の田川市出身で、筑豊炭田、僕が生まれた時には既に閉山しており斜陽の時代ではあったが、そこで育ちました。
今回、福岡で芝居をつくる機会をいただき、自分なりの炭鉱の話をやってみようかな、と思いました。ただし、そんなにリアルなものではなく、子どもの時から田川にいたことで、ああいう土臭い町に育ったことが自分は嫌で嫌で仕方がなかった、でも、やっぱり心底嫌いにはなれない。そんな気持ちをベースにした作品を書こうと思います。
内藤さんと一緒にやるのは初めてなので、それも含めて新鮮な気持ちで芝居を創れると思いますので、よろしくお願いします。
劇作家・脚本家。
85年より座付き作家として劇団☆新感線に参加。以後、『阿修羅城の瞳』『髑髏城の七人』などの物語性を重視したエンターテイメント時代活劇“いのうえ歌舞伎”を多く生み出す。劇団の本公演以外での近年の舞台作品は『真田十勇士』(13,15)。演劇界にとどまらず、コミック原作やアニメ『天元突破グレンラガン』(07,09)の脚本・シリーズ構成、『仮面ライダーフォーゼ』(11-12)の脚本・メインライター、『キルラキル』原作・脚本、『映画クレヨンしんちゃん ガチンコ逆襲のロボとーちゃん』脚本など幅広い活躍を行う。
内藤 裕敬 (ないとう ひろのり)
内藤です。(中島)かずきさんとは20代前半から、(一緒に仕事はしたことがないが)大阪の焼鳥屋でたまに会う仲でした。(池田)成志さんとは飲んだくれているときに新宿あたりで会ったりしていた(笑)。
福岡には、自分の劇団(南河内万歳一座)も早い時期から呼んでもらっていて、西鉄ホールで公演したり、まどかぴあにも随分昔から、開館当初から関わりがありました。
そんな中で、地元の劇団の諸君ともだいぶ交流ができるようになり、今回も何人か昔からの馴染みがいます。
そして、こういうところでまた交流がひろがる事業を、公共ホールのまどかぴあが地域振興としてしっかりと踏ん張ってやっていくというのは、素晴らしいこと。それに協力できることは光栄と思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
南河内万歳一座・座長。
59年栃木県生まれ。高校の時に状況劇場『蛇姫様』(作・演出/唐十郎)を見て芝居の道へ。1979年、大阪芸術大学(舞台芸術学科)に入学。4年間、秋浜悟史教授(劇作家・演出家)に師事。その間、“リアリズムにおけるインチキの仕方”を追求。80年、南河内万歳一座を『蛇姫様』で旗揚げ。以降、全作品の作・演出を手がける。現代的演劇の基礎を土台とし、常に現代を俯瞰した作品には定評があり、兵庫県立ピッコロ劇団や世界的ピアニスト・仲道郁代との共同企画など、劇団外での作・演出も多数。00年読売演劇大賞・優秀演出家賞受賞。著作に『内藤裕敬処女戯曲集劇風録其之壱』『青木さん家の奥さん』がある。
池田 成志 (いけだ なるし)
池田成志でございます。よろしくお願いいたします。
僕はここ大野城市出身なのですが、かずきさんの出身地の田川とか、博多とか、他の地域は色々特色がある土地柄ですが、大野城市はとりたてて特徴がある地域ではございません。
あるとしたら、地名の由来となっている大野城という古代の城があったとか、蒙古襲来の堤防の遺跡(水(みず)城(き))があったとか(このあたりまで海岸だったんですよね)、近くに太宰府があるとか。
だから、きっとかずきさんは古代の話を書かれるのではないかな、と勝手にイメージしていましたが、まさかの炭鉱の話だと(笑)。一体何の関係があるんだ!と若干戸惑ってはおります。
地元で創るお芝居、地元の役者さんと共演するのも初めて…でもあまり緊張はしていません。
なるべく今回はキリキリしないことをテーマにしようと思ってます。できるだけのんびり、ほこほこしながら、熱い夏を乗り切りろうかと。
地元で1ヶ月間親孝行もできるし、色んなことをほこほこ、熱く、あたたかく考えながら、やっていこうと考えています。
もちろん、新しい作品を創るんだ!という気概もありますが、このまどかぴあという小屋は、東京にあったとしても結構良い小屋だと思うんです。
なので、ぜひ福岡近郊の方、および九州近郊の方に、ちらっと見にきていただければなぁと思いながらやらせていただきますので、どうか、どうかどうか一つ、よろしくお願いいたします。
62年生まれ、福岡県大野城市出身。早稲田大学在学中の82年「第三舞台」に参加し、俳優活動を開始。オフビートなキャラクターを得意としつつ、多くの劇作家・演出家の作品に出演し演劇界を牽引する俳優のひとり。2013年、イキウメ『獣の柱 まとめ*図書館的人生(下)』およびNODA・MAP『MIWA』の演技を高く評価され、第48回紀伊國屋演劇賞個人賞を受賞。
阿部 周平 (あべ しゅうへい)
選ばれたからには、皆さんの心に長く残る作品作りのために頑張りたいです。
福岡県古賀市在住
1982年、福岡生まれ。裏方として劇団・万能グローブ ガラパゴスダイナモスに参加。次期公演で役をもらい演劇を始める。所属劇団本公演の他、同じく福岡で活動する若手劇団に客演。 他、イベントの仕掛け人や冊子のモデル、コンサートの幕間劇出演など、ジャンルを問わず活動中。
岩本 将治 (いわもと まさはる)
ワクワクしています。ワクワク感を胸にのりきりたい。楽しんでもらえる作品を作りたい。
福岡県福岡市在住
福岡市出身 小学校でサッカー、中学、高校で柔道に没頭。その後、某プロレス団体を受験するも不合格。1993年、東京で芝居を始める。2002年、拠点を地元福岡に移し、舞台、映像で活動中。最近では、北九州芸術劇場プロデュース公演「彼の地」、フィリピン映画「インビジブル」等に出演。
岡 武史 (おか たけふみ)
熱く泥臭く、エネルギッシュに。魂燃やして。やらしていただきたい。
福岡県福岡市在住
22才の時に初舞台を踏み、その後一年間福岡の劇団で活動したのち上京。東京では目立った活動は出来なかったが、今の自分の芝居の師とも呼べる人と出会い、そこで三年程学び帰福。帰福後は事務所へ所属、舞台、ドラマ、映画、CMなど映像の方でも活動。その後、昨年九月に所属事務所を辞め現在はフリーで活動中。
木内 里美 (きない さとみ)
熊本から来ました。楽しみでワクワクしています。暑い夏が楽しみ。
熊本県菊池郡在住
劇団SCOT、演劇集団かもねぎショットを経て、2005年、熊本を拠点にThe ちゃぶ台を主宰。自作自演のおばぁちゃんシリーズは幽霊との不思議な出会いの「やまとなでしこ」や一人芝居「とめばぁさんのある一日」など県内外で巡演。他に平田オリザ作「隣にいても一人」や池田美樹作「上通り物語」などに客演。
元一 (げんいち)
この公演がいろんな人の力で作られていることを感じながら、最後まで頑張ります。
福岡県福岡市在住
30歳。2011年より始まった無倣舎のプレイバックシアター「ゆめみるきかい」の影響を受け、実在する人間や事件に寄り添う演劇表現を模索するプロジェクト「サンピリ」の演出家として活動。2015年度は一人芝居を中心に10作品を企画し、福岡・長崎・北九州・熊本・名古屋を駆け回った。歌う。
小湊 倫子 (こみなと りんこ)
大野城市出身、大野城市育ち、大野城市在住です。大野城でこういうことができるのがとっても嬉しい。お芝居を普段見ない地元のたくさんの方々にお芝居を楽しんでいただいて、こういう役者さんたちが福岡にいるんだ、って知って欲しい。頑張ります。
福岡県大野城市在住
大野城市在住。9歳より演劇塾アトリエGOCCOにて演劇やモダンダンス(Margaret Morris Movement)を学ぶ。2012年に活動を再開。様々な表現活動を通して「文化芸術を身近なものとして楽しむ」ことを多くの人に知ってもらいたいと、演劇、ダンス、ミュージカル、落語、よさこい等、幅広く活動している。
酒瀬川 真世 (さかせがわ まよ)
地元にしがみついて生きてお芝居をやっている人間が創って「これだけのものが作れるんだよ」ということを若い人たちにも観てほしいです。
福岡県福岡市在住
1979年、福岡生まれ。フリーの俳優として福岡・九州を拠点にさまざまなカンパニーで多数の舞台経験を重ね、映像作品やラジオ・CMナレーション、落語など多方面で活動。「その空間にある身体」から演劇を立ち上げる。また2013年から韓国釜山の演劇人との滞在共同製作を続けている。
椎木 樹人 (しいき みきひと)
お三方と一緒に地元の俳優が一緒にお芝居を作れることが刺激的です。観に来てくださる皆さんに新しいものをお見せできると思います。その一員として頑張ります。
福岡県糟屋郡在住
万能グローブガラパゴスダイナモス代表。2004年、福岡にて「万能グローブガラパゴスダイナモス」結成。 以後、全ての公演に俳優として出演。外部出演も多数。近年は、北九州芸術劇場プロデュース公演などに出演するほか、積極的に東京や大阪の舞台に出演するなど、福岡にとどまらず日本を股にかけた活動を展開中。
高野 由紀子 (たかの ゆきこ)
家を改造して公演しています。まどかぴあの舞台にはその家が7個入るかな(笑)。夏がとっても楽しみです。
福岡県行橋市在住
1988年生まれ、福岡県行橋市出身。2006年自宅劇場『守田ん家。』を拠点に活動する、演劇関係いすと校舎に入団。飛ぶ劇場、ままごと、北九州芸術劇場のリーディングセッションやプロデュース公演にも多数出演、子ども向けWSのアシスタントも務める。からあげだいすき。
中村 大介 (なかむら だいすけ)
たぶん一番若い年齢で、光栄です。素晴らしい作品を皆さんにお届けできるように頑張りたいです。
福岡県福岡市在住
1990年、福岡生まれ。大村美容ファッション専門学校に通いながら2009年に演劇ユニット福岡ゆう子TPN銀行を旗揚げ、主宰として演出、出演、衣装製作する。2012年からは(劇)池田商会に所属し衣装、俳優として活動を始め、高校、専門学校のスタッフワークとしての衣装指導なども行っている。またNHK福岡放送局にて行われた古代エジプトファッションショーでは衣装製作も行った。
中村 雪絵 (なかむら ゆきえ)
メンバーが太めの人が多いので(笑)、紛れないように個性を出していきたい。
福岡県福岡市在住
2002年劇団ぎゃ。を旗揚げ。2014年解散まで全ての脚本・演出を手がける。同劇団にて東京・大阪・福岡3都市ツアーや市民吹奏楽団とのコラボレーション劇など企画性の高い作品を制作。NHK福岡放送局やアクロス福岡主催事業のショー構成・演出、脚本・演出など放送局や文化施設主催のイベントや演劇作品も多数手がけている。福岡屈指のコメディエンヌとして知られており、ギンギラ太陽'sや劇団あんみつ姫など福岡の有名劇団に数多く出演。
松岡 優子 (まつおか ゆうこ)
まどかぴあの節目になる作品に関わることができて光栄です。熊本は今、ホールが避難所になったりして、演劇を見る環境がないです。この作品を八代に持って行けることがとても嬉しいです。
熊本県熊本市在住
幼少よりバレエを亀井聡一郎、隆一郎に師事、北九州&アジア全国洋舞コンクール入選。高校・大学の演劇部を経てゼロソーに旗揚げから所属。2013年度は舞台生活30周年記念公演群を上演。近年の代表作に「フォルスタッフ/ウィンザーの陽気な女房たち」「チッタチッタの抜け殻を満たして、と僕ら」「父と暮せば」など。
山下 晶 (やました あきら)
ずっと九州で福岡を中心に活動してきました。今回100パーセント役者として関われるのでワクワクしています。
福岡県大野城市在住
2002年に『役者の、役者による、観客のための集団』を旗印にグレコローマンスタイルを結成。2008年以降、プロデュース公演以外は全作品で作・演出。出演。役者としては福岡県外で制作された作品にも多数出演している。また、映画、TVドラマ、ラジオドラマ作品にも多数出演しており、劇場空間にとどまらないマルチな活動を展開中。
横山 祐香里 (よこやま ゆかり)
気合を入れて「福岡の俳優だ」って、頑張っていきたいです。
福岡県福岡市在住
久留米市出身。小学生の頃から演劇に興味を持ち、地元の市民劇団やミュージカルで活動。2008年からは福岡の劇団・万能グローブ ガラパゴスダイナモスに入団し、劇団公演や九州の外部団体へ出演。近年は自主公演を企画し、脚本・演出も手掛ける。2016年3月には福岡・長崎・熊本で一人芝居のツアーを行った。
<中島さんに質問>
Q:どんな物語になりますか?この作品に盛り込みたいメッセージは?
A(中島):浮足町という福岡にある架空の町。炭鉱町というといくつかの街並みが想像できるが、どことは限定していない。その町に、第二次大戦に陸軍が開発していた人造石炭採掘人間「ホランド」を探しにくる人たちがいるのだが、町は何となくのんびりしている、そのようなところから始まる物語です。
書いているものを観ていただいて、観た方が受け取ったものがメッセージだと思うので、あまりここで言うことでもないし、言えるものでもないと思います。ただ、面白いものにはなると思いますので、それを観に来ていただければと思います。
Q:テーマを炭鉱にされた理由は何ですか?
A(中島):今回、このお話をいただいて、福岡で作るということで、福岡の話が良いだろうなと。
そして、先ほどお話したように自分は田川市出身なんですが、実は僕、地下を掘る話をよく書いているんです。新感線でもよく「今回は洞窟ですね」とか「今回は地下ですね」とか言われるんですけど、意外と穴を掘って解決するという話が多いんです(笑)。
それはもう、そういうもんなのかなと、あの町に生まれたからなのかなと、何となく思っていたので、じゃあ、そこをちゃんとやってみようかなと。ちゃんとやると言っても、自分がやる時にあまりリアルにやっても仕方ないので、(演出が)内藤さんなので、もうちょっとアングラ的なものがいいかな、じゃあ「アンダーグラウンド」だな、ということで、非常に安易なところから始めた話なんです(笑)。
しかし安易なところから始めて考えてみたら、あまり自分ではやったことがない話のつくり方の作業だったので、意外と今、悩みながらまとめているところです。
<内藤さんに質問>
Q:地元の俳優を使います。演出としてどのようなことに心がけようと思われていますか?
A(内藤):オーディションに200人近く(180人)の応募があり、書類選考して80人ぐらい(71人)に絞りました。その人たちをグループに分け、3日間かけて見させていただいた。その中からの選抜メンバーです。
Q:精鋭ですね。
A(内藤):精鋭中の精鋭です(笑)。書類選考で残った人たちのうち、ほとんどが可能性を持っていた。
ちょっと鍛えたらよくなるのにな、あともう一歩ハードルを越えたら物凄く面白くなる、ちょっと経験が欲しいか…という人がいっぱいいた。
今、大阪でこういったオーディションをしても200人も応募がない。たとえそこから書類選考で80名に絞ったとしても、箸にも棒にもかからない人が1/3ぐらいはいる。それが大阪の現状かなと思う。
今回、オーディションで見た人それぞれが色んな可能性を持っていらしたので、これは地域として潜在能力が高いということだろう。それにもかかわらず、それを発揮できる、開花させる企画・プロデュースが少ないのではないか、という気がしている。
そういう意味で、今回はこの地域が持っている俳優の潜在能力が高いということを、しっかりと舞台で証明しないといけない。それは固く心に決めていこうと思っています。
Q:ご自分の劇団に連れて帰りたいと思う役者さんはいますか?
A(内藤):それは出てくると思いますよ。落ちた人の中にもいました。
本当にオーディションは楽しかった。別の機会で、別の作品でお逢いできたら、しっかりと良い俳優に成長するだろうという人もいたので、そういう機会が福岡にいっぱいあればいいのになと思います。
<池田さんに質問>
Q:地元の大野城でこの企画をやる、今のお気持ちを教えてください。
A(池田):非常に照れくさいですね。福岡の人間はみんなお調子者ばっかりなんで、自分もつい調子に乗って引き受けて、えらいことになったなと思っています(笑)。
一緒にやったことのない人ばっかりだし、1ヶ月も福岡で稽古するのも初めてだし。まぁ、大変だろうなと思いながらも、僕も結構良い歳なので、そういった新鮮な経験をするべきだよな、そうだよね、という気持ちがふと湧いてきました。
母も住んでいますし、大野城市におべっかを使っておかないと今後いけないんじゃないか、恩返しをしないといけないんじゃないかという浅ましい気持ちもややあって(笑)、お引き受けして、頑張ろうと思っている次第です。非常に照れくさいです(笑)。
<林田館長に質問>
Q:今回、大野城市だけでなく九州に発信しようと思ったのは?
A(林田):企画した職員のねばりにつきます。大野城発、大野城プロデュースの公演ということで、九州各地でこのお芝居を観ていただきたいという思いで、あちらこちらにお願いに行って、八代、宮崎が受け取ってくださった。その受けとってくださった側の思いも伺いたいと思います。
谷口 亮二(八代市 経済文化交流部文化振興課・八代市厚生会館 主任):貴重な機会を持ってきていただいて光栄に思っています。
立山 ひろみ(公益財団法人宮崎県立芸術劇場 演劇ディレクター):宮崎でも創造事業をしています。今回のキャストの中にもこちらの事業に参加してくださった方もたくさんいらっしゃいます。地方から作品を創造して発信していくことは、今、とても必要なことだと考えていますので、この企画にも参加させていただきました。
林田:職員たちの「この企画をやりたい!」「できあがったものをたくさんの人たちと共有したい!」という思いが、こうして八代、宮崎に届いて、とても嬉しく、今まさに浮き足立っている状態です。
企業メセナの元祖であるふくやさんにも今回、お力をいただきました。川原社長にも、一言いただけますでしょうか?
川原 正孝(株式会社ふくや 代表取締役社長):今回、大野城まどかぴあ20周年ということで、私も丁度社長になって20年。
まどかぴあは長年、芸術・文化を中心に取り組んでいらして、私どもも何らかの形で応援させていただいています。
今回、私も舞台を観るのは好きなんですが、特に当社の副社長が演劇好きで、今回の企画は素晴らしいメンバーだということを聞きつけてきました。
さらに、地元の人たちも参加するということで、福岡・博多の人間というのは、芸どころと言われるぐらい、どこでも出て何でもしきるメンバーですので、今回のキャストの方々も殆どそうじゃないかなと思います。池田さんを中心に、面白い作品ができるのではないかと、物凄く期待しています。
我々も微力ながらこういった形で、文化芸術が福岡の地でずっと大きくなるように、加勢していきたいと思っています。
<小磯さんに質問>
Q:今回、脚本と演出を中島さんと内藤さんにお願いした理由を教えてください。
A(小磯):まず、私どもで「何か創りたい」という思いが芽生えた時に、やはり福岡出身の方とか、まどかぴあにご縁があった方に依頼したいという思いがありました。
中島さんは、まどかぴあ開館当初から劇団☆新感線の公演をやらせていただいたこともありますし、九州戯曲賞の受賞作品のリーディング公演をさせていただいていた時に、その戯曲賞の審査を中島さんがされていました。「この年齢になると、福岡に帰って何かやりたいなと思うことがあるんです」とおっしゃっていたのを、私が聞いていたんです。
そして、脚本を誰にお願いしよう、となった時に、中島さんがそういえば、そういったことをつぶやいていらっしゃったなと(笑)。本当に怖さ知らず、ダメもとで、お願いできないでしょうかとお電話しましたら、「スケジュールが合えば」ということでしたので、東京に伺って正式にお願いをさせていただき、書いてくださるということになりました。
最初は中島さんの既存の作品を使わせていただくのでも、と思っていたのですが、ご厚意で新作書き下ろし、そしてあて書き、ということになり、本当に贅沢な、こんなに贅沢な作品でいいのだろうかという企画になりました。
内藤さんには、以前別の事業でご一緒させて頂いた時に「なんか創れよ。創んないとだめだよ」と言われまして、その時「創る時には何か手伝っていただけますか?」とお聞きしたら、内藤さんは覚えてないとおっしゃるんですが(笑)、「創るんだったら手伝うよ」とおっしゃっていただきました。
その男気に私が乗っかったという形です。「内藤さん、おっしゃいましたよね?」というと「覚えてねーよ!」と言われたのですが(笑)、ごり押しをしてお願いをしました。
そして、数年前にこのまどかぴあの舞台で、池田成志さんが「満月の人よ」という作品に出演されまして、その時に、大野城市出身でこんなに素晴らしい役者さんがいらっしゃるということで、私どもの上司からも「(池田さんを)大事にしなさい。もし何かまどかぴあでやる時には、絶対池田成志さんに関わって貰わないといけないだろう。」と言われました。このプロデュース公演を企画した時に、一番最初に決まっていたことは、「池田成志さんに出演をお願いする」ということでした。ただ、正式にご出演は決まっておらず、自分たちの中で決めていたことではありますが。そこから始まりました。
そして、この企画をするのであれば、20周年の節目がいいだろうということになりました。皆さん本当に快く引き受けていただいたおかげで、この公演が成り立っていると思っています。実は私も今になって、ちょっと怖くなっています。大変なメンバーに関わっていただいているということを、改めて感じています。ですが、9月、大輪を咲かせますので、どうぞよろしくお願いいたします。
<オーディションで選ばれた皆さんへ質問>
Q:今回は色んな九州の劇団のコラボレーションのようです。地元キャストを代表して、山下さんから一言。
A(山下):僕はもう長いこと福岡で演劇をやっているんですが、今回初めてご一緒する方もいますし、昔から知っている人もいます。
今回のような企画は、特別なことではないんだと思っていて、これが日常になるような福岡の環境に早くなるべき。そして、やっとなってきたというのが、率直な感想です。
これを契機に、どんどんこういった企画が、大野城、福岡、九州と増えていって、発展していけばいいなと思っています。その第一歩を踏み出す僕たちは、幸せだなと思います。
Q:今回、万能グローブ ガラパゴスダイナモスから最多の3人が選ばれていますが、その代表の椎木さんから一言。
A(椎木):本当に光栄なことに、今回うちの劇団から3人選んでいただきました。僕らは福岡で10年劇団をやってきて、福岡から何か創りたいとか、福岡から何か発信したい、それにこだわってやってきました。
今回、プロデュース公演は福岡では久々ですし、それにうちのメンバー、他の選ばれた方々、そして内藤さんも中島さんも池田さんもいらっしゃるということで、「やらせていただいている」という気持ちではなく、自分たちが地に足をつけて、「僕たちが面白いものを創るんだ」という気持ちでやりたいと思っています。特にうちのメンバーとはそういう話をずっとしているので、本当に気合いを入れて、ある意味、言葉は悪いですが、舐められないように一生懸命努力をして、舞台に立ちたいと思っています。
<さいごに>
Q:中島さんに代表してお聞きします。どういうところに注目して観に来て欲しいか、コメントをお願いします。
A(中島):僕や池田さんのように、福岡で生まれ、それなりに年を重ね経験を経た人間がここに戻ってきて、そして、今ここで暮らしている人たちと一緒に芝居を創る、そういう形の中で、ここ福岡で新しいものが生まれる。
でも、もちろんそれは福岡で終わるものではなく、熊本(八代)、宮崎を回り、もっと言ってしまえばもっと先のところまで広がるような可能性を持った芝居を創れればいいなと思っておりますので、ぜひ、そういった新しいことが起こる現場を、確認しに来ていただければと思います。
取材・文責:水上徹也
2016.06.27
カテゴリー:
いよいよ、出演者が決まりました。
具体的な制作発表は6月に行われますので、今しばらくお待ちください。
脚本の中島かずきさんに、作品の構想を伺いました。
そして、オーディションの審査をされた内藤裕敬さんと中島さんに、選考するうえで注意していたことや感想をお聞きしました。
新作の構想について
水上 作品の構想はできているんですか?
中島 基本的にいつもあてがきです。今回も、無理を言ってオーディションを済ませてから考えますとお願いしました。大まかに書きたい話はありますが、キャストを見て、どういうスタイルで行くのか、具体的な芝居の色合いを決めていこう。今はそんな感じです。
今回選んだキャストの皆さんでやるなら、今考えているざっくりとしたストーリーラインをどういうシチュエーションでやれば面白くなるか、重いのか軽いのか,芝居のタッチも含めてイメージを膨らませて考えていく。ここからがスタートですね。
新感線でも先に全てのキャストが決まっていて、その役者さんにどういう芝居をやってもらいたいかを考えていくんです。今回も同様です。
水上 具体的なイメージは湧きましたか?
中島 新感線ほど虚構性に富んだ話ではなく、地に足がついた人たちの物語。とは言っても中島流になるので(笑)。でも、いつもとは違うタッチで探っていく感覚がつかめてきましたよ。
新感線では、まず主役を輝かせる題材やシチュエーションを作ります。いわゆるスター性をもった方を主役に呼ぶことが多いので、おのずとそういう形になる。
ですが今回は、町に生きる人たちの群集劇になるのかな、という感触です。最初は、もっと主役を決めてその人間を中心に話を作ろうかと思っていたのですが、どうせならいつもと違うことがやれたらいいなと、オーディションの途中から思い始めました。雑多な人々の思惑が交差する町の話になりそうな予感がします。
水上 架空の町ですか。
中島 もちろん架空の街です。でも、自分が生まれたのが筑豊の田川なんです。自分の思い出とかも踏まえた上での話にしようかなと思っています。今から構想に入るので、できあがりは全く違っているかもしれませんが。(笑)
水上 モチーフとかはありますか?
中島 出身も田川ですし親戚が大牟田の四山鉱にいたんでよく遊びに行きました。西村健さんの「地の底のヤマ」を読みましたが、昭和40年代から現在にわたって大牟田に生きる人を描き出した労作です。僕はまったく違うけれども、自分なりに子どもの時に過ごしてきた炭鉱町へのアプローチをしてみたい。福岡でやるからには、福岡的なものにちょっとこだわろうと思っています。
オーディション企画
水上 市民オーディションでの仕事は初めてですか?
中島 東京で「ラフカット」(※注)をやったことがあります。書類審査は無しで応募してきた人は全員オーディションに呼んで芝居を見るのが売りの企画です。僕は3回くらいやりました。「オーディションをやった後に構想に入らせてください」というのは、その時からあります。
(※注:舞台に立つチャンスを探す役者に、「力試しの場を提供」していくプロジェクト)
水上 今回は、オーディションでどこを見ていました?
中島 イメージが湧ける人がいるかどうか、を見ていました。「この人だったら、何をやってもらったら面白いかな」とか、漠然と自分がやろうと思っている作品にどう絡むかな。「あの人たちでやることはこういう事かな」と考えていましたね。
水上 オーディションをしながら、演出家とイメージの共有をされますか?
内藤 イメージは会話しますけど、書くのは彼ですからね。(笑)
中島 要は舞台の上で託せる人かどうかですね。舞台にその人の存在が、我々のイメージを託せる人かな、というのを見ています。面白い人たちが集まったと思いますよ。
オーディション会場で。応募者の表現に笑顔がこぼれる。(審査員:中島さん(左)内藤さん(右))
水上 イメージに合う人がいたということですね?
中島 逆もあります。「その人だったらこんな風にしよう」ということも。そのためにオーディションをしているわけで、伝わりにくいかもしれませんが、両方なんですよ。
そのすり合せなんですよね。書きたい物語もあって、役者の肉体もあって、それをすり合わせる作業をしています。それは今までさんざんやってきたので自分の中に回路としてあるんです。書いているものとその役者の肉体があって、物語が化学反応するという。
オーディション風景。お二人の真剣なまなざし。
タイトルは「浮足町アンダーグラウンド」(仮称)
水上 書き上げるまでの時間は?
中島 芝居だとだいたいプロットから取り掛かって3か月です。
水上 出演者が決まったわけですけど、どんな舞台になりますか?
中島 新感線は様式美だったり、いのうえ歌舞伎は活劇ですけど、今回は活劇にはしないだろう。今回はアクションはないと思う。
水上 内藤さんはそのあたりはどうですか?
内藤 動きたそうな奴がいっぱいいたけどね。(笑)
中島 構造としては活劇ではない。ということですね。どう料理するかはお任せしますけど。
水上 タイトルは決まっていないんですか?
中島 一応、「浮足町アンダーグラウンド」を考えています。現代劇です。
水上 男女半々?身体的能力を求めますか?
中島 だいたい男女同じくらいで、能力というか舞台の上での表現力ですね。
内藤 そうだね。発表の水準というのはあります。なので、稽古のための稽古でなく、芝居を作る稽古ができていくスキルがないと大変ですよ。こちらから出す課題も難しいと思うし、それをクリアしていく力が要りますね。
水上 稽古で、どんなふうに作品に仕上がっていくのか楽しみです。
劇作と演出と
水上 美術、音楽は、作家と演出家とどちらが構想されるんですか?
内藤 演出家です。注文するときはありますけどね、事前に。
中島 僕は、渡したらお任せです。(笑)
水上 脚本の演出で、いつの段階で舞台のイメージができるものですか?
内藤 本を読んだら立ち上がってきますよ。それを具体化していく。音響と美術は、2か月から1か月半前に本を読んで、おおまかなイメージを伝えて、美術家がラフを出して、決定して発注。本番の半月前がぎりぎりかな。そこへめがけて舞台化していくということです。
水上 作家は舞台の具体化を見ていくんですね?
中島 自分なりに成立すると思って書くわけですけど、演出家に渡して、よろしくお願いします、ということになりますね。
水上 お二人は、ご一緒の仕事は?
中島 今回が初めてです。
内藤 ゆっくり話したのは初めてだね。飲み屋とかでは若いころから飲んでたけどね(笑)芝居を一緒にやるのは初めて。
水上 今回初めて組まれて、内藤さんにはどんな期待をされていますか?
中島 内藤さんなんで、人と人の関係性が密にあったほうが良いと思ってます。群集劇というのも、演出家のタイプも考えて、そういう軸でイメージしています。
水上 本を渡した後に、イメージのやり取りとかもするんですか?
中島 芝居のいいところは、何回も直しができるところ。役者を見て、稽古を見て、「こうしよう」というのが見えてくる。稽古に入る前に演出家からの直しが入る。稽古に入ってからの直し。本番を開けてからの直しもあるよね。
内藤 あるある。
水上 大野城の稽古にも来られますか?
中島 できれば来たいですけどね。初日の顔合わせ、本読みには立ち会います。あとは可能であれば来たいと思っています。
稽古に臨む
内藤 基本は地元のメンバーで創るわけです。外枠のフレームがどういう取り組みかというと、僕はもちろんいい作品作るために台本を読み込んで演出するんだけれど、同時に、可能性がある人たちに、指導しないといけないところはしっかりと指導したい。せめて、足りない部分が足りないとわかるように。
水上 まどかぴあの事業としての目的ですね?
内藤 オーディションをして思ったことは、180人の応募があって、1次で半分になり、2次では3日間で70人見ました。みんな、「役をやりたい。出たい」っていう訳ですよね。ほとんどが選に漏れることは皆わかってる。10数名が発表されたときに、「180人から選ばれた」ということが周りから言われる。これから先、「最後まで残った人ですよ」という見方をされますよ。その人たちが、事業が終わってから、「下手だった」は、まずいじゃない?
水上 そうですね。
内藤 この期間の中で、「俳優とは、こういうふうにセリフと向き合っていくんだ」、基本的なことはしっかりと押さえられるようになって、「やっぱりこの人は違う」と思われるようになって欲しい。その辺も意識してます。
中島 経験値として、そこは大きいねぇ。
池田成志さんの役どころ
水上 成志さんが出演されます。ご本人は「自分が主役になるような本にはならないし、なってほしくない」とおっしゃっていました。
中島 ええ、もちろんそうですよ。今回の企画で池田成志主役なら、それはやる意味がない。今回の成志さんは飛び道具。中心は、福岡の役者ですよ。それでも彼が舞台に出たらさらっていくと思うんだよね(笑)。
内藤 成志くんも、今回の企画の趣旨を理解してるし、中に入って、現状にない風を吹き込みたいと思ってるんじゃないかなぁ。彼自身が俳優を鍛えるでしょうね、きっと。
中島 それはあるだろうね。
内藤 僕は、演出家として鍛えるけれども、成志が俳優として鍛える。
水上 昨年のワークショップでも細かい指示をしていました。
中島 彼は考えて芝居創る人なんで。常に考えてますからね。
大野城あるいは福岡の可能性
水上 今回、応募した参加者に「今回の作品には選ばないかもしれないけれども、能力の良しあしではない。すごく可能性を感じます。ぜひ続けてください」というメッセージを話されました。
内藤 選ばれていない人にも可能性があるから、ちゃんとした取り組みをして俳優として良い体験をしてほしいね。「いい作品に参加してほしい」、「稽古を積んでほしい」と思う人はいっぱいいました。
水上 応募者が180名という反響にも驚かれていましたね?
内藤 この地域は恵まれてますよ。他の自治体でもお手伝いをしますけど、地元に劇団も演劇やってる人もいない。そういう人を育てるところから始めなきゃいけませんから。
ここには、劇作家もいる。九州戯曲賞に面白い戯曲を書いてくる人がいっぱいいる。180人が応募してくる。選に漏れた人の中でも、今、ちゃんとした基礎をやったら飛躍的に良くなる人、半年か一年基礎訓練したらよくなる人がものすごくいるわけよ。
環境としてそんな中にいるわけだから、その気になれば何でもできると思う。
ここには人がいるわけです。公共劇場がバックアップしていったらもの凄いことになると思いますね。凄い可能性があると思う。
水上 広がっていかないといけませんね。今回のことが続いていくことが大切ですね。
内藤 劇作家、演出家、俳優がいて、劇場がある。ないのは熱心になる偉い人たち、知事や市長さんじゃないのかなぁ。
中島 うん。
内藤 兵庫県は文化都市宣言しちゃったんですよ。今の知事さんが。文化をバックアップしてくれる宣言をしている都市もある。福岡はどうなんですか?
公共ホールの役割をちゃんと理解してもらって、公共ホールがやらなければいけないことが山ほどある。そのために劇場が要るんです。
あとは、演劇プロデューサーが何人かいて、企画を引っ張ってくる。その辺の人がいれば、環境がガラッと変わりますね。
水上 今回、期待も大きいです。大きな波紋を広げてほしいです。出来上がりを楽しみにしています。
中島 頑張ります。
※この取材は、2月に行われたもので、作品の内容やタイトルは変更になる場合があります。ご了承ください。
(取材・撮影:水上徹也 シアターネットプロジェクト代表)
2016.04.01
カテゴリー:
プロデュース公演 お二人目のインタビューは、内藤裕敬(ないとうひろのり)さんの登場です。
大野城まどかぴあプロデュース公演は、中島かずき(劇団☆新感線座付作家)の新作描き下ろし、内藤裕敬(南河内万歳一座座長)が演出、池田成志が出演という豪華な布陣に、一般オーディションで選ばれた出演者が、「大野城発」の舞台に挑みます。
「集え!演者たち。」と呼びかけたチラシが、福岡の演劇関係者を大いに刺激しました。
「まどかぴあ舞台創造プログラム」として行われるこの事業では、2015年9月から11月にかけて3回にわたる「俳優になるためのワークショップ」を開催しました。
プロデュース公演の演出を担当する内藤裕敬さんも、「“想像力”を養う!俳優ワークショップ【台詞と向き合う編】」を担当しました。
今回の事業へかける思いやワークショップを通してみた福岡の役者の印象などを伺いました。
(大野城まどかぴあ 小磯係長 同席)
水上 大野城との関係はいつからですか?
内藤 初めて来たのは10年くらい前です。「公共ホールがネットワークを作って地域と結びつく」という財団法人地域創造が行っている事業です。公演とワークショップを地域で行って、参加した人と劇場とのつながりを深めるという趣旨で、手を挙げてくれたのが大野城まどかぴあでした。それからのおつきあいかな。
水上 その時の内藤さんの言葉がまどかぴあの担当者の印象に残っていたそうですよ。
内藤 なんか言ったかな(笑)
小磯 「僕がちゃんとやりますから」って言ってくれました。
内藤 (笑)。その後も、ピアニストの仲道育代さんのクラシックコンサートを構成演出していまして、何度かまどかぴあでコンサートをしました。
まどかぴあの今回の企画について
水上 今回の話は即決で決めたんですか?
内藤 いのうえ(ひでのり:劇団新感線)がやったらいいのにと思った(笑)。でも、いのうえも忙しいし、僕は西鉄ホールや北九州芸術劇場で公演もやらせてもらって、福岡県内の劇場にはお世話になってました。さかのぼればテアトル博多やイムズホールにもお世話になりました。劇団を作った早い時期から九州には来て、古くからお世話になっていましてね。小磯さんも良く知っていますので、微力ながらお力になれたらと(笑)
水上 中島かずき、内藤裕敬、池田成志の三人が揃った公演が実現しました。
内藤 中島君や(池田)成志君との関係は結構古くて、以前の僕のアパートがいのうえ(ひでのり)と同じでした。稽古場でも会って、帰って来て焼鳥屋でも会う。その焼き鳥屋に(中島)かずき君が来て、出くわしていたんです。成志君は僕が書いた芝居に出てくれたりして、共通の友達が多いんです。
水上 池田成志さんの背中を押す一言があったとか?
内藤 そんなこと言ったかな。大野城市の出身だし、会った時、「やるだろ?」とは言ったけど。
水上 その時、成志さんは何と?
内藤 「、、、やります」、と(笑)。その時、「おう、成志君も出るんだな」と思った。
水上 今回のプロデュース公演への意気込みを聞かせてください。
内藤 良いものを作んなきゃいけないと思っています。オーディションで出演者を集めてお祭り的に作って「楽しかった」、では先につながんない。きっちりといいものを作る。演劇の潜在能力を福岡は持っていると思うし、ガチっとやったらいいものができる。それを証明しないとだめです。「やればそこまでいけるんだ。」ということです。
まどかぴあの20周年をお祝いする気持ちもあります。だから色んな人が楽しめるものにしたい。同時に、作品の成果としてしっかりとした結果を残すことが大事だと思いますね。
”想像力”を養う!ワークショップ [台詞と向き合う]
水上 ワークショップをしていて感触は?
内藤 参加者は何らかの形で演劇にかかわっている人が多いです。学生時代に劇団を結成して何年か続けている、でも基本的に我流でやっているんですね。それが5年10年やってくると「こんなはずじゃない」「ステップアップできるはずなのに」、と見えない壁に突き当たる。そこで滞る。何故そうなるかというと、根本的なものにふれた事が無いからです。自分に何が足りないか判断できない。基礎を論理的に踏まえていればわかることがあるけれど、それがわからないので無手勝流でハードルが高いところにチャレンジするとか東京に行くとか、憶測で動いている。
今回は、始めの一歩をもう一回確認することをやりました。壁にぶつかっている連中をふるいにかけたら、案の定、セリフに向き合うのに必要な要素のうち、いくつ足りてるのかいくつ足りてないのか、それぞれ思い当たる節があると思う。
俳優だから役作りをするし、台詞と向き合わないといけない。でも、向き合う前に必要なこと、フィジカルな面も含めて、知ってほしい。台詞に向き合う前が足りてないから向き合えないんじゃないか、ということです。
今回のワークショップでも行けるところまで行きます。どこまでいくかな?参加者によるところが大きいですね。
水上 演劇の基礎についてのお話が出ましたが、内藤さんはどこで学んでこられたんですか?
内藤 大阪芸術大学で学んだんですが、教授が言っていることが難しい。秋浜先生って、手ごわい人でした。クラス30人の9割がわかってない。かろうじて2~3人が、「こういうこと?」って。講義の内容は論理的で観念的。自分で劇団を作ってから、「このことが、こういうこと言ってたのか」って、自分で整理して積み上げました。
大学では演劇を知りたいと思っていたので、俳優になりたい連中よりは演劇について幅広く考えたかもしれないですね。
プロデュース公演に向けて
水上 プロデュース公演は1か月きっちり練習すると伺っています。オーディションの人と池田成志さんでは差があります。作品に仕上げていく大変さがあると思いますが、稽古場でどんなことがおこるんでしょう?
内藤 わかんないね。僕は、「こういうふうにして」というタイプではないんです。
「あなたはどうやるわけ?」、出てくるものに期待する。僕はそれが出てくる環境を作る役。自分の中から出てくるものを発見しそうな人に出演してもらいます。
水上 オーディションも楽しみですね。
内藤 まだ見ぬ才能に出逢う可能性がありますからね。
水上 中嶋さんの脚本は、出演者のあてがきになるそうですが。
内藤 そうですね、楽しみです。
水上 劇団とプロデュース公演と違いますか。
内藤 大きくは変わらないね。東京でプロデュース公演をやる時と市民参加と一番違う所は、気持ちの持ちようですね。だからまずは、うまかろうがへたかろうが、とりあえずガツンと行くんです。参加している人が「この程度じゃ本番迎えられない」「市民参加だからこんな程度でいい」と思っているその意識を変えないといけない。
「市民参加でこんなのが作れるんだ」と思える、そうでないと何のために1か月稽古するのかわからない。まず意識改革から入ります。
最初から「プロと同じものがつくれない」。とか、「プロと同じ演出を受けられたら嬉しい」とか。その意識を変えないと日常に甘んじるね。
そんなにできない体験だよ。一生のうち何度もできない。その体験を身に染みてもらった方が良い。
水上 今回、劇団の人が多いです。
内藤 ちゃんと自分のステップや何かのチャンスにしたい思いは強いんじゃないかな。
水上 内藤さんは、1か月大野城に泊まり込みで稽古ですね。
内藤 どうなってるかなあ。劇場のこの近所に住んでチャリンコで毎日通ってくるんだろうね。
水上 2月にオーディションで、8月が稽古ですね(※注)。気が早いですが、採用が決まった人に、稽古に向けての準備はどんなアドバイスをしますか?
内藤 「走っとけ」くらいかな(笑)
水上 稽古は厳しそうですね。体力が必要のようです。楽しみにしています。ありがとうございました。
(※注)このインタビューは、2015年9月23日に行われた「台詞と向き合う」ワークショップの合い間に行いました。
聞き手(撮影も):水上徹也(シアターネットプロジェクト代表)
2016.03.21
カテゴリー:
プロデュース公演にむけての第一弾です。
まずは、公演に出演される、池田成志(いけだなるし)さんに突撃取材。
プロデュース公演の関連企画として2015年11月にワークショップが開催されましたが、俳優の池田成志さんも講師としてかかわっていらっしゃいます。
3日間にわたって行われた「表現力を養う!実践演技編」の終了直後でお疲れのところ、福岡の演劇人についての感想や、ご自身の役作りの秘訣について、興味深い話をお聴きしました。
日時:2015年11月23日ワークショップ終了後
場所:まどかぴあ楽屋・客席
聞き手(撮影):水上徹也(シアターネットプロジェクト代表)
主催の大野城まどかぴあ文化芸術振興課の小磯 上(こいそ ほずる)係長にも同席していただき、貴重な情報をお聴きしました。
水上 ワークショップが終わったばかりですので、ワークショップ参加者の印象からお聞きします。参加者は福岡で演劇に関わる人が多かったですが、どんな印象ですか?
成志 ステレオタイプの子が多い気がしますね。「違うやり方もあるんだよ」って思うんだけど、間口が狭いですね。「会話していない」し、「聞いていない」。これって福岡っぽいのかな?ヒエラルキーの枠の中で「俺の背中を見ろ」みたいな演技をしているんじゃないのかな。それだと楽しくないと思う。
相対的には元気がない感じです。やらせるとどんどんやる人もいますけど、暴れる奴がいないし、「ダメでしょ」っていう奴もいない。平均的な人が多い。
人のセリフを聞いてられない、だから聞いてる演技しちゃうんです。古い演出家に習ってるんじゃないの?と思っちゃう。
水上 ワークショップに使っていたテキストはコントなのに重たい印象でした。
成志 最初、みんな楽しげにやろうとして、軽かったんです。僕が「ドラマみたいにやって」と言ったことが多少尾を引いちゃった。
水上 「ウエットにやらないで」と指示を出していました。
成志 3人の中心がウェットだとウェットになる傾向がありましたね。刑事の役なんかでも、「刑事だよね、刑事らしくやろうよ」、ってことがスタートラインなんですが、持って生まれた血がウェットだとそこに引きずられちゃう。ウェットになる。元々軽いのりの刑事がドラマチックにやってるって、発想に展開しなくなるんですねえ。そこをひっくり返す共演者になってほしいのになあ。カラッとやっていた子がいたけど、ああいうことなんだよね、本来は。これ、コントですからね。ちょっとグルグルしちゃいました。これは説明不足だったかもです。
水上 池田さんは存在感がある役者で、今までいろんな舞台を踏んで来ていますが、個性的な役が多いです。役作りはどうやっているんですか?
成志 何も考えてないんです。役作りを考えたことないです。考えてないからダメと言われる(笑)よく誰かの真似をしようと考えますね。「よし今日は風間杜夫みたいなトーンで行こう」ってやっても、誰もそれが風間杜夫だと思わない。俺が思ってるだけでね。それが面白かったらそれで行こう、って(笑)真似しても、ズレが生じるからいいんですよ。正直なところ、基本は、頭を空にして臨みます。
水上 ワークショップの参加者に「その動き、謎なんだけど」と、細かい動きのアドバイスをしていました。役作りと関係しますか?
成志 僕は、自分から仕掛けなきゃいけないときは考えるけど、向こうが仕掛けてきたらこう返す。「こう来られるか~」、それを感じようとしています。基本、反射芸です。
水上 反射芸ですか?
成志 吉本新喜劇の人って、こける演技をしますよね。それって、聞いてなきゃこけられない。当然、注意深くならないといけない。それだけなんだけどなぁ。それを積み重ねていったら何かが生まれてきたり。だから「こういうふうにしよう」、って最初に思わないほうがいいんじゃないの。という考え方なんです、僕は。
水上 その役の個性とかは?
成志 稽古に入る前、はじめは広いところで役をとらえていて、「これ明るい役だな」とか、「これははじけない役だな」とか。僕ははじける役が多いんですけど(笑)。というところから始めて、芝居の稽古は一か月あるから、明日はこんな風にしてみようかな?それが層になって積み重なっていくから面白いんです。
水上 池田さんの芝居の面白さの秘訣みたいですね。
成志 それを、最初から「この役はこうじゃないかな」なんて、できるかい。(一同笑)
そんな複雑な演技が簡単にできたらみんなアカデミー賞とれちゃう。それを若い子がそういうことをいうから問題なんですよ。
水上 確かにワークショップでも、すごい背景を作って役を持ち込んで来ていた人がいましたね。
成志 薄っぺらい面積に役を塗り込めようとするのは、考えが違うと思っちゃう。そういう人を見ると、「よし、どうやって殺そうかな」(一同笑)。そういう人は多いですけどね。
自分には自信がある。でも結局、何にも動けない。無心でいたほうがいいんじゃないの?と思うんですけどね。
水上 池田さんはいろんな演出家の人と仕事をしてきました。演出家が変わる時はどんな臨み方をされますか?
成志 27歳から1つの劇団にいないのでそれが日常なんです。現場のたびに演出家が違う。何の心の臨み方もしない。(笑)
水上 常にフラットということですか?
成志 常に次は違う演出家ですから。できれば違う色の作品をやってみたい。「今回はしゃべらない役だろうな」、と思って稽古に行くわけですよ。「あれ、いつの間にか俺しゃべっちゃってる」。基本、その演出家の色に染まりに行ってます。
水上 演出家の色がありますからね。
成志 そうでないと面白くない。演出家から「どうかなぁ?」って言われて、「こうしたほうが良いんじゃないかな?」って、自分が今までやって来たことをふまえて提示してみたりもしますが、基本は、その演出家に寄り添う形で臨みますね。
水上 まどかぴあのプロデュース公演は内藤さんが演出です。
成志 内藤さんは、初めてなんです。「俺に任せとけ。大丈夫」っていってました(一同笑)。
水上 市民オーディションと一緒の舞台です。
成志 最初は荷が重いと思いました。
最初は、作品として良い作品を作らないといけないと思ったんですけど、あんまりそういうこと考えないほうが良いよな、って今は思ってます。厳しく望むというよりは、緩やかにいったほうがいいんじゃないかなあという、漠然とした勘はあります。それは楽しく稽古しようということでもないですし、厳しい目で作品を社会的にブラッシュアップしていくつもりでも、全くないです。なんていうか言い方が難しいけど、「のんびりなんだけど、落ち着いてちゃんと芝居してる」雰囲気になればいい。ちゃらついてないのがいいな。漠然としてて申し訳ないですけど。
水上 中島さんの脚本です。新感線みたいになりますか?
成志 新感線のテイストをやると問題になる(一同笑)。まったく期待してない。中島さんだから、福岡の歴史を絡めて書いてくるんじゃないかなあ?
それに内藤さんの演出だから、集団としての関係性を重視した作品になったらいい。
「作品的にはとんがってないけど、関係性は取れてたね」、「こういう話だったね」、「登場人物が生き生きしてたね」、みたいなことがやれたらいいと思ってますけどね。
水上 大野城の出身で、まどかぴあの舞台に立つことはいかがですか?
成志 こういう企画自体はじめてなんで、まったく想像もつかない。どうなるんだろうと思ってます。
水上 アマチュアの人と一緒に芝居することが初めてなんですか?
成志 そうそう。でも、こっちもアマチュアみたいなもんですからね(一同笑)。
水上 いや~、違うでしょ。
成志 たどってきた道ですから。「面白そうだな~」と思われればいいなと思ってるだけです。僕もそうやって参加するつもりです。だから、俺が滝沢修さんみたいにドーンとした「主役です!」みたいな芝居にしないでね、と思います。
水上 ならないと思います(笑)
成志 ならないと思います(笑)。ま、かずきさんはちゃんとお話を作ってくるタイプだから、お任せしています。でも、稽古でどうなるかわからないし、不安で楽しみです(笑)
水上 そうですか。
成志 何か波乱の匂いはしますが……
水上 匂いますか?
成志 かずきさんと内藤さんは水と油ですからね。よくそんな組み合わせになったな(一同笑)。かずきさんのいいところは、提示したものを演出家に料理されるのは大丈夫な方なんですよ。それをどう料理していくか、されるか?お二人とも百戦錬磨なんで、そこはすごく信頼してますけどね。
水上 あてがきをするそうですね。
成志 あてがき、やめたほうが良いんじゃない。(一同笑)誰をあてがきするの?
小磯 最初は過去の作品の書き直しという案だったのですが、「新作描き下ろし、あてがき」になりました。
成志 出る人決まってないじゃん。
小磯 オーディションの後に書かれるそうです。
成志 良く知りもしないのに、あてがきって?
小磯 ワークショップ参加者のことを聞かれるかもしれませんね。
成志 ええ!?そんな無茶な!でも、今回のワークショップの参加者は全員通してもいいんじゃない?
小磯 全くわかりませんけど、かなり絞られるのではないでしょうか。審査員にお任せしますけど。
成志 それは大変だ。
水上 あっという間に時間になりました。ありがとうございました。
成志 こんな話で大丈夫ですか?俺が一番ウエッティじゃないか?(一同笑)
2016.02.05
カテゴリー:
大野城まどかぴあが満を持して演劇製作に乗り出します。
開館20周年記念事業として、プロデュース公演の制作を発表したのは、2015年7月。
「まどかぴあ舞台創造プログラム」として、2016年9月の「プロデュース公演」と、公演に先駆けた関連企画「俳優になるためのワークショップシリーズ」を2015年9月から11月にかけて行いました。
劇ナビでは、プロデュース公演に向けての取り組みを一年をかけて追いかけていきます。
内藤裕敬さんや池田成志さんへの公演についてのインタビューや、オーディションの発表、演劇製作の裏話など、読み応えのある記事を紹介していきます。
ご期待ください。
2015.12.26
カテゴリー:
■■僕の人格を形成したもの■■
物心つく頃 神社の境内で祭りの時にやってきたドサ回り劇団のチャンバラ芝居
■■小学生時代■■
『ゴジラ』シリーズ
■■中学生時代■■
『小さな恋のメロディ』『ゴッドファーザー』
■■高校生時代■■
『仁義なき戦い』『サンダカン八番娼館』
■■大学生時代■■
年間に観た200本の映画
『子午線の祀り』は演劇体験の原点
『ブロードウェイミュージカル ウィズ』でミュージカル初体験
映画の道に進むつもりが子どもたちに演劇や音楽を見せる仕事に歌舞伎・文楽・能・狂言・落語といった古典芸能から人形劇・バレエ・ジャズ・オーケストラまで、あらゆるジャンルの舞台芸術を子どもたちに届ける もはや演劇のない生活は考えられません
でも演劇に触れたことがない人のほうが多いのが現実 はてさて、その魅力をどう伝えようか
「劇ナビFUKUOKA」は、株式会社シアターネットプロジェクトが運用管理しています。
株式会社シアターネットプロジェクト
https://theaternet.co.jp
〒810-0021福岡市中央区今泉2-4-58-204