万能グローブ ガラパゴスダイナモス10周年記念
リレー対談No1 ガラパ×イムズ
(対談:写真上左から)
椎木樹人(万能グローブ ガラパゴスダイナモス 代表)
川口大樹(万能グローブ ガラパゴスダイナモス 脚本・演出)
古場 治 (イムズ 営業統括部リーダー)
進行:水上徹也(シアターネットプロジェクト 代表取締役)
福岡を拠点に活動する「万能グローブ ガラパゴスダイナモス」(以下、ガラパ)が結成10年を迎えました。昨年は、プレイベントとして再演シリーズを一年にわたって開催、のべ3500人の動員をはたしました。福岡で今最も勢いがあり、メンバーも充実しているガラパのこれからを展望するために、福岡で活躍する様々なジャンルの方とのリレー対談を企画しました。まず、トップバッターとして登場していただいたのは、10周年記念公演の会場でもあるイムズの古場氏。どんな話が飛び出しますか。
水上:ガラパ10周年おめでとうございます。今回は“劇ナビとタイアップしてリレー対談をする”企画の第一弾ということで、ガラパのお二人に今回の公演を行うイムズホールの古場さんを交えて3人で色んな事を喋ってもらおうと思っています。
川口・椎木・古場 よろしくお願いします。
古場:10年で何本作ったの?
川口: 20本弱くらいですかね、多分。20はいってないと思いますけど・・・。
椎木:あ、でも小さい作品とかを合わせるともっとやってますよね。
川口:短編合わせると30本くらいは作ってるかもですね。
古場:えー(笑)その辺ちゃんとしてくださいよ。10周年なんだから(笑)
椎木:そのふわっとした感じがね(笑)まだ進行中ですから(笑)
結成のころ
古場:結成したのは、高校卒業してから?
椎木:一応、公式的には卒業と同時になっているんですけど、みんなで集まって劇団やろうぜというのは高校の時なんです。中心メンバーが僕の一つ下だったんで、彼らが高校卒業すると同時に結成、で旗揚げになったんです。
古場:オリジナルメンバーはそれぞれ別々でしょ?高校は一緒だけど、大学とか・・・
椎木:バラバラですね。
川口:母体は高校演劇の時の仲間ですね。大濠高校を中心に、個人的に仲が良かった椎木の同級生を誘って
椎木:可愛い女の子ばかり選んで(笑)
川口:めぼしい女子を選んで(笑)
古場:設立の時のメンバーは今はどのくらい?
椎木:僕と川口さんだけですね(笑)ちょっと寂しいですね(笑)10周年って思ってますけど、実は皆まだ3年みたいな奴ばっかりなんで(笑)ただ、メンバーが変わってもみんながガラパですって言ってるのはちょっと面白いな、と思ってて。
古場:それもかっこいいと思う。だって大リーグだってみんな入れ替わっちゃうでしょ。なんかそれが今っぽい。
川口:あー。確かに今っぽい(笑)
椎木:確かに。イムズも入れ替わって(笑)それでもイムズホール(笑)
古場:ずーっといる人、いますけどね(笑)
椎木:劇団やろうっていうのは、 僕と僕の一つ下のメンバーが中心だったんです。川口さんは僕の二つ上の先輩なんですけど、たまたま僕らが劇団作る直前にフリーになったんで一緒にやります か?って。川口さん、最初は俳優だけやってたんですよ。ガラパ旗揚げの時、違う奴が脚本書く予定だったんですけど高校卒業してないってことで他の奴が書く ことになって。更にまた別の奴が書いたんです。
ガストで俺と川口さんとそいつと3人で集まって、「ちょっとこれ違う」って。で、川口さんが「俺も書いてみるわー」ってノリで書いてきたらそれがすごく面白かったんです(笑)
古場:それが自分としても初めて書いた本?
川口:そうですね。全く初めてでしたね。
椎木:シチュエーションコメディです。その時から。
古場:俺ってもしかして才能あり?みたいな感じでのその時に認識したりしたの?
椎木:なんですかそのいやらしい質問(笑)
古場:いや、元々書きたくて書いたのか、そんな気がなかったのに書いたら実は才能に気付いたのかっ、ていうのに興味がある。
川口:元々、書くことへの興味はあったんですよ。本読むのとか好きだったから。何の確証もないままとりあえず書いてみようかな、と。今考えたら相当危なっかしいことしてますよね。書けるかどうかもわからないのに劇場とって、やるっていって。
水上:すでに劇場は押さえていたの?
椎木:ノリで(笑)
古場:若さだねー。
椎木:あんなことがなければ、今こんなに苦しむことなかったのにね。書けないって(笑)
川口:僕、わりと流されるままにやってきたので(笑)高校の同級生が卒業するときに劇団を立ち上げるって ことになって、「じゃあやるやる」って。僕、元々高校時代は舞台監督をやってたんですよ。裏方が好きなんです。それが好きでずっとやってたら、ちょっと役 者で出てよ、って。じゃあ、出てみるって。そしたら良かったみたいで。次に別の企画の公演に呼ばれて、それを観に来てくれてた人から呼ばれて、って繰り返 しているうちにずっと役者をやっていった。そのうちにガラパに声かけられて、最初は、役者で出るんだろうなーと思っていたら、こういう流れで脚本書くこと になった。そして書いたら・・・ってあんまり自主的になにもしてないですね、これ。(笑)今気づいたけど。
古場:役者も上手ですもんね。すごい存在感があるもんね。
川口:ありがとうございます。
古場:役者もやって脚本も書いて…野田秀樹みたい。
川口:(笑)それはちょっと言い過ぎですよ。それはね野田秀樹に失礼です(笑)
目標だったイムズ
水上:古場さんは結構観てるんですか?ガラパの芝居。
古場:ガラパはここ何年かのは観てます。初期のものは見てないものもあるけど、最近のはわりと。
水上:どうですか古場さんの目から見てガラパは。
古場:すごいなと思います。やっぱり、書く力っいうか筆の筆力っていうんですかね。すごいです。
水上:脚本がいいということですか?
川口:なんかあんまり人から誉められ慣れてないんで、どうしていいかわからないですね(笑)
古場:きっと、もっとおじさんになったら人生のわびさび的なものとかが入ってくるかな(笑)もうちょっと深いものがスパイシーに入って来てほしい時もありますけど、エンターテイメントとしては最高。うちの会社もガラパのファンすごい多くて。
椎木:川口さんも加わって、ガラパは最初から制作中心だったんです。福岡で演劇をやるために“お客さんを沢山集める”という目標があって、そのひとつにイムズホールで公演するのが目標だったんです。
水上:場所の力はありますからね。目指せイムズ、という目標としてね。
椎木:はい。そこのステップにいきたい。それまでに6年かかりましたけど、最初にイムズホールでやらせてもらったときは相当感慨深かったです。ついに最初の目標の一つだったイムズホールで公演できたんだ、と。「イムズ芝居」以来10年ぶりと言われました。福岡の地元の劇団の上演が。
古場:あー。そうだ。
川口:旗揚げする年にイムズで やってた大塚ムネトさんとトマトママが出演されてた「東京物語」で、若い役者がアンサンブルで出る演出があって、僕と椎木が参加してたんです。イムズホー ルの舞台に初めて立って、その時にガラパもイムズでやりたいなぁと思ったんです。あと、ヨーロッパ企画っていう劇団がすごく好きで、ちょうど僕らが旗揚げ する年に「サマータイムマシンブルース」っていう映画化もされた作品でイムズに来たんですよ。僕お手伝いで入って、仕込みも手伝って、今も付き合いが続い てます。そんなのもあって、自分の劇団でイムズに行くっていうのはかなり大きな目標だったし、そこを目指して進んでこれたというのはありますね。
古場:ありがとうございます(笑)
椎木:最初にイムズで公演すると なった時に、周りの方たちに、「最初にお客さん入れなかったらもう次はないからね」って言われて(笑)僕らも、実績もなく名前も知れてないのにイムズホー ルでやるんだから絶対お客様入れないかん、って、めちゃくちゃがんばった。イムズホールもすごく協力してくれて。それでお客さんもたくさん入って最高動員 を達成したんです。
これは、自分たちの中でも相当でかかったですね。イムズホール公演の前に小さい小屋で一か月間やって1000人入れてるんですけど、メジャーな天神のど真ん中のイムズホールで千何百人入れたのが僕らの一番最初の財産、名刺代わりになった。イムズホールで公演を成功させたのが、この5年間の糧になっています。
川口:自信になりましたね。イム ズでやっている芝居って、旗揚げした頃は自分たちと違う世界のものだった。そこに自分たちがたどり着いたっていうことは、ひとつ上のステップにあがれたん じゃないかな、と。自分たちのことって、自分たちじゃわからないじゃないですか。だからイムズにガラパの名前が入った懸垂幕が掛かっているのをみたときに は感動しましたね。制作の橋本さん持って帰りましたからね(笑)知り合いがみんな写真を撮って送ってきました。お客さんがとにかく喜んでくれたんですよ。 ガラパを普段から応援してくれているお客さんが、天神のど真ん中にガラパの名前がドーンと出てるよ!って。僕らはお客さんと一緒に作ってきた劇団っていう 感覚があるから、そうやって一緒に喜んでくれたっていうことがとにかく嬉しかったですね。
ガラパの動員力の秘密?
水上:古場さん、今の話はどうですか?
古場:ガラパは動員力というかお 客さんを集める力が本当に高い。これ、評価のポイントなんですよね。いろんな地元の劇団が沢山ある中で何でガラパ?と言われます。イムズとしてこういう理 由だから肩入れするんですっていう明確にメッセージしないといけない。人を集める力を持っているのが劇団の力で、シンプルに高い評価のひとつの指標です。
椎木:評価してくれる人やずーっと付いて来てくれてるお客さんが喜んでくれるからやれてるって思います。
川口:僕は劇団に対して、作品を 作るだけじゃなくて、場を作る、みたいなイメージを持ってます。一方的に観る、演じるっていう関係性じゃなくて、作品の世界をお客さんも一緒に楽しんでい るっていう空間を作る。だからロビーも一生懸命飾りつけしたり、チラシにこだわったり。公演するまでの準備の間もずっと楽しめる長い旅、そういう風にした いって、旗揚げの時からずっとあるんです。
古場:大事なことですよね。
水上:大事なことですね、それは。お客さんのことを意識しているってことですからね。作品の内容はどうですか?お客さんを喜ばせようというその辺り、作家としてはどうですか?
演劇に対するイメージ
川口:旗揚げのころからずっと一 貫していることがあります。僕、昔全く演劇に興味がなかったんです。演劇を観たことがない人達の中の一人だった。高校に入って初めて演劇に触れたんですけ ど、それまでどちらかというとネガティブなイメージを持っていました。演劇っていったら、お遊戯会みたいなもの、「前向いてやってるもの」だって思ってい た。たまたま高校演劇の勧誘で劇団☆新感線の『轟天』を観たんですけど、こんな面白いことをやるのも「有り」なんだと衝撃を受けた。それから三谷幸喜さん の作品を観て、演劇ってこんなに笑えるものなんだ、っていう事に気付いたんです。演劇を知らない人は、先入観を持ってる人が殆どだと思うんですよね。僕が そういう人間だった(笑)だからそっち側にいる人として僕は作品を作っています。
古場:なるほど。
川口:高校の時、演劇に対してそういうイメージを持っていた僕が、自分でガラパの芝居を観たときに、「あ、演劇って面白いやん」って気づけるような芝居を作る。だから昔の自分が観て面白いと思える芝居かどうか、このラインがすごく常に意識しているところです。
だから、演劇を初めて観たときに、それまでの色んな先入観が覆される体験がとにかく大きいですね。 「そとばこまち」がやってた『マンガの夜』っていう芝居は、生瀬勝久と渡辺いっけいの、ほぼ2人芝居のワンシチュエーションコメディです。それが面白く て、すごく衝撃だったんです。こんな面白いのか、こんなに笑えるのかっていう衝撃がものすごくて、これをお客さんが味わってくれたらこんな嬉しいことはな い。この気持ちがずーっとあります、もう10年以上。芝居を作る上で意識するしないじゃなく、この気持ちが常に根っこにあります。
それぞれの演劇の出会い
椎木:古場さんって最初に演劇みたのはいつぐらいなんですか?
古場:子ども劇場を小さいころに観てましたね。お芝居みたいなものを意識して観だしたのは学生の頃。それも、つかこうへいとか第三舞台とかの作品を地元劇団がコピーしてやるみたいなもので、安いチケットのやつを観にいったりしてたくらいですよね。
水上:演劇の原体験ですね。川口君の原体験は轟天ですよね。原体験は自分の中に影響があるよね。椎木君はなんですか?
椎木:僕は子ども劇場をよく観て て、演劇は真面目なものだと思ってました。どちらかというと、それがいいと思っていた。だから、大濠高校の演劇部に入ったときに、こんなにふざけてこんな に馬鹿なことやって、最初イラッと来たんですよ。真面目に演劇やらないのなんかむかつく、みたいな感じだったです。ただ、やってみると、演劇がダサいとか いってる同級生が観てめっちゃ笑う。そういうのが快感だったですね。女子にきゃーきゃー言われたり、友達がすっげぇ面白い、とか言うのが快感になっていっ て、最初はそれでやっていました。今は川口さんと同じ考えで、初めて演劇を観ますという人たちが面白いって言ってくれることに対してすごい快感がありま す。
僕、全く評価されないんですよね。演劇賞も俳優賞も無縁だし。東京でやっても、全然箸にも棒にも掛からないんです。これ悔しいし、そこでも認められたいって気持ちはあります。
でも逆にそういうものとは違う評価もあるなぁって思っています。僕の母の友達がもう60歳とかなんですけど、ずっと観に来てくれるんですよ。毎回来てくれて、毎回面白いねって、次いつあるの?って言ってくれることがすごい快感だなって最近は思います。
水 上:一言で演劇っていっても作家の数だけ表現がある。ガラパの表現は、川口君や椎木君が感じた衝撃からシチュエーションコメディから始まったんですね。初 めて観に来てくれたお客さんに、「これが演劇だっ」て大上段に構えるよりも、「楽しんで帰ってもらいたい」っていうのを大切にしているんだと感じました。
川口:演劇のイメージを壊したいなと思っています・・・結果的に壊れてくれたらいいんですけど。
椎木:偏見があるからね。
イムズというブランド
椎木:あとは、おしゃれなギャルとかも観に来てもらいたいですよね。
川口:おしゃれなギャルは観に来てほしい。
古場:(笑)なんか今すごい話をしたのにすごい軽いほうにいったね。
椎木:同じ意味ですよ(笑)今話を聞きながら、なんでイムズでやるのかをずっと考えてたんですけど、イムズのおしゃれ感、おしゃれギャルが集まる感じとか。(笑)
アートの匂いもする場所で僕らがただ面白いだけの演劇をやるっていうのがすごいなって思う。イムズ ホールで公演をすると、イムズの会員さんにメールで宣伝を送ってもらって、そういう人がふらっと舞台を観るに来るってことがあるんですよ。普段は買い物で 来てるような人がガラパを観て、もしゲラゲラ笑うとしたら。それが特に可愛いおしゃれギャルだとしたらそんな快感はないです。
演劇とイムズとのコラボがある。演劇を観る、じゃなくてガラパを観てガラパを面白いと思ってくれたらそれが一番嬉しいです。イムズでやるってことは、こういうことに繋がっているなって思いました。イムズとは僕らの中でそういうマッチングがある。
水上:イムズというブランドですね。イムズはコンテンポラリーダンス、音楽、演劇など、様々なパフォーマンスアーツを行っています。
古場:そうですね。アルティアムもあるし、ホールもオープンしてからずっとアートや舞台芸術を熱心に頑張ってやってきたという現実はあるので、そういう風にみられていると思いますね。
椎木:音楽のライブもするじゃないですか。僕も何回か行ったことある。演劇だけじゃないってのもいい。
古場:いろいろやってますからね。落語もあるし。確かに多ジャンルにやってますね。
ガラパ、次のステップ
古場:さっき「僕らみたいに面白いだけの・・・」とかって言ってましたけど、確信犯的にやったらいいと思う。
椎木:「面白いだけの・・・」とかってのも、確信犯です(笑)
古場:(笑)いや、だとは思うけ ど(笑)だけど例えば戯曲賞とか演劇賞とか目指せばいいと思うし、僕らはエンターテイメントだからこんなのとは無縁でいいんだ、と思う必要はないと思うん ですよ。そういうのも貪欲にやればいい。椎木君も色んな芝居に客演で出たりしてるけど、他の団員も皆どんどんやったらいいと思うし、外から色んなものを吸 収して、でもガラパとしての表現はこうなんだってやっていくのがかっこいいって思いますね。
椎木:最初は僕らには力がなかったのでとにかく劇団でやってきて、劇団の大事さも昔よりも120%わかっているつもりですけど、10年 経ってそれぞれが出来ることも増えてきた感じはあります。そういうことがやれる土台、体力がついてきた。それぞれが色んなことをやりながら、ガラパで何が できるんだって、そういう風になっていったら確かに面白いですね。僕ら客演を呼ぶこともなかったですし劇団員だけでやってきたから。
川口:ガラパはそれにこだわってたからね。
椎木:それをやってきたからこその今があるかなって気はしますね。ここからは逆に幅広くいろんなところにいってもいいかなと思いますね。
古場:最近の活動や椎木さんの話を聞いてるともうお芝居っていう枠組みの中に留まろうとはしてないというか完全に外に向かって違うオリジナルのガラパ表現を目指して次のステップに行こうとしているんだなって感じますね。
福岡を誇りに
椎木:10周年記念公演って決めて、なんで10年 やってきたのかということをすごく考えたんですよね。今まではそういったことを考えずに、お客さん集めるんだ、いい作品作るんだ、という思いだけでやって きたけど、改めて振り返ってみた。この福岡で、東京と比べると中心じゃないと言われる福岡でなぜやるのかと考えた時に、福岡でしかやれないことをやりた い。もうそれしかないって思ったんですよ。
僕らの好きなこの街で『こういうことをやってます』ってことを言えないと東京に太刀打ちできない。な んか負けてる気がして。東京にはいいものは沢山ある、芸能界もあるし引っ張られることもあるかもしれない。だけど僕らみたいにいろんな企業の人とか古場さ んとかホールの人達といろんな話をしながら福岡という街全体と何かを作っていくことができるんだったらそっちのほうが面白い。10年経って振り返ったことで自信も出てきたんだと思います。ガラパとして。
古場:そうはいっても、絶対的に 人口とかマーケットが小さいっていうジレンマはあるじゃないですか。同じ地方に根ざしてってことで言えば、大阪はやっぱりマーケットがありますよね。絶対 的なマーケットの大きさがあるけど福岡はやっぱり厳しいじゃないですか。そこのジレンマはどうブレイクするつもり?演劇で食っていくって考えたときに。
椎木:僕は逆になんでも出来るなって思ってます。確かに、俳優だけで食うことはできない。マーケットがないから。ただ、福岡はいろんな人と繋がりやすいんです。
僕ら、東京の劇団の演出家とか俳優とかとたくさん繋がってるんです。そういう人たちは東京から福岡にやって来た時に僕らの方がパイを持っているので、東京と福岡の力関係が逆転するようなことが沢山あるんですよ。だから、知名度のある演出家と芝居を作ることが起こっている。
そうなってくると僕ら福岡では第一人者になれる可能性があると思うんですよ。演劇界の第一人者になったら何が起こるかっていうと他の業界の第一人者と出会えるようになるっていうのを最近感じています。
そうなってくると東京や大阪では既にあるパイを、新しく福岡で作れるんじゃないかと思っています。僕 のイメージでは、企業と何か一緒にやるとか、観光と一緒にやるとか商業施設と何か一緒にやるとか、そうして新しいパイを作る。それが福岡にしかない演劇 ブームを作ることじゃないかと思っています。そうすれば食える。映画にでなくても事務所に入らなくてもそういう価値を演劇が作れるんだったら僕は演劇で食 えるって。そういう可能性を探っていますね今は。
水上:環境で言えば福岡はマスコミもあるしこういうホールもあるしいわゆる「装置」がある。それは確 かに東京大阪に比べたらパイは小さいわけだけれども、他の中小都市に比べると間違いなく色々な新しいことを働きかけることができる装置がありますからね。 古場さんの立場からは、どんなイメージが湧きますか?
古場:ガラパが“演劇で企業研修をする”っていう話を聞いて、すごいなーと思いました。早速うちの総務に渡しておきました(笑)ガラパは僕らがイメージしている以上にお芝居以外にやれる容器が大きいんじゃないかなと感じました。
椎木:もし僕らが東京でももっと やれるようになっていけば、多分福岡もほっとかなくなるだろうなと思います。だから僕らは福岡を拠点に、福岡のお客さんに向けていい作品を作り続けますけ ど東京にも大阪にも打って出て、作品力で打ち負かしていきたいと思ってます。そうしたら、福岡でも仕事が増えるかもしれないですね。他の地域の人が「福岡 に来たい」とか「福岡っていいな」って出来たらいいな、と思います。
僕、昔から人がやったことはあまりやりたくなくて、僕の人生の目標は、恥ずかしいですけど教科書に載 ることなんですよ。ずっと後世に語られる何かになりたくてそうなるためには新しい何かを作らないといけないんですよね、絶対。その新しいものを作るってこ とは俺は福岡でも絶対できるし福岡じゃなきゃできないんじゃないかなって思うんですよね。「椎木という奴がいた」っていう、そういうものをしたい。福岡に はそういう可能性があるって思ってます。
ガラパ前とガラパ後
古場:ガラパぐらいになっちゃう と、「ガラパみたいになりたい」っていう学生演劇をやっている人たちも増えてくるから、ガラパの作る道筋が彼ら下の世代の人達のひとつの指標になっていく でしょうね。そのためにもどういう先鞭をガラパが付けるかが演劇シーンにとってはひとつの大きな分水嶺だね。
椎木:面白いですよね。ほんとにケモノ道をね(笑)。道、ないからね。
古場:「ガラパ前」と「ガラパ後」みたいな。ガラパ前はみんな東京に行って。松尾スズキさんもそうだし、九州発で東京でビッグになった人はいっぱいいるけど、やっぱりガラパ後は福岡だよね、とか。そういう風にね。
椎木:確かにそうならないとですよね。
新作について
水上:次回公演作品についてきかせてください。
川口:「ひとんちでさよなら」っていうタイトルの芝居です。昔、「ひとんちで騒ぐな」っていう芝居を作ったんです。「家」が舞台のシチュエーションコメディの決定版みたいな作品だったんです。
10周年という節目の年でどんな作品をやろうか振り返った時に、もう一回ストレートの強さにこだわっ てみたいと思ったんです。続けていくうちに変化球も覚えてくるし色んな技術を覚えてくるんですけど、ここでもう一回、真ん中にどーんっと投げるってことを やりたい、と。そうなった時に「家」っていう設定は僕の中ですごく魅力的で、まだもっと掘り出せる何かがあるんじゃないかなって。
最近僕のおばあちゃんの家がなくなることになったんです。おじいちゃんもう亡くなっちゃって、おばあ ちゃんは施設に入っちゃって。誰も住んでいないし管理する人もいないので、家を売るということになったんですけど、この話を聞いた時に「これは寂しいぞ」 と思ったんですよ。この感覚が芝居と結びつきそうな気がしたんです。今自分の身に起こったこと、家にまつわる出来事、と考えたときにすごくビビっときたと いうか、ドラマをすごく感じた。
それで、家が主役の芝居。だからホームコメディではない(笑)。家じゃないと起きないトラブルとか家 の中の構造でしか生まれない間違いとか、そこから発生するドラマが自分の中で今一番純度が高いんですよ。そこにストーリーをのせていくんですけど、普段は 最初のイメージでは足りないので要素を増やしていくんです。今回はやりたいイメージが多いので削っていく作業になっていくのかな。
古場:今書いてるとこ?
川口:今書いてるとこです。今まさに。設定を練りこんで・・・
古場:楽しみ!
椎木:すっごい面白いと思います。
水上:かなりセットを作りこまないといけないんじゃない?
川口:そうですね。家が舞台なので、僕の実家がモチーフになると思うんですけど・・・。家って迷路みたいじゃないですか。部屋に2つドアがあって、2人がお互いにすれ違う、ベタだけどその瞬間がすごく面白い。この面白さはガラパの原点だなと思う。
椎木:確かに(笑)
川口:シンプルだしベタだし。そ れってストレートじゃないですか。変化球ではない。でもそれを、ギャグでやっちゃうとベタにしかならないけど、今だったらもっとちゃんと見せれるような技 術が自分の中でも身に付いたんじゃないかなって気がしてます。そこに挑戦してみたいなって気持ちもあるんですよね。だから今回は最近の作品よりも、よりシ チュエーションコメディっていう感じの芝居になるのではないかと思います。
椎木:俄然楽しみになってきました。
古場:やっぱり俳優さんも楽しみだよね。
椎木:川口さんの新作も久々ですからね。
水上:昨年は一年間再演でしたからね。
椎木:なんかもう新作をどうやって作ってたか忘れてますもんね(笑)
古場:今の話を聞くともうすでに形があって、自分はそれを削り取っているだけなんだみたいな的な話をされると、もう楽しみにならざるを得ないですね。
最高の盛り上がりを約束
水上:何ステージあるんですか?
椎木:6ステージ。5日間です。
水上:ほぼ一週間ですね。
椎木:勝負です。
古場:普通に借りたらむっちゃ高いですからね。
一同:(笑)
椎木:がんばります。福岡中を驚かせますよ。ガラパと知り合いでガラパ可愛がっといてよかったーって言わせますから。あいつらさ、俺若いときから知ってんだよって言わせますから(笑)
古場:TNCの方とか応援団の方とかを着実に引き込んでいるっていうのはやっぱり人間力もあるだろうしね。いろんなガラパの力ですよ。
椎木:がんばろ。
水上:じゃあ、締めに一言お願いします。
椎木:福岡でやってる、福岡の人達とやってるっていうのを大事にしていきます。それが僕らの支えになっています。だからどんな大統領がお前らは俺が育ててやったとか言ったとしても、イムズの古場さんが僕らを育てましたっていいますんで。可愛がってください(笑)
一同:(笑)
水上:じゃあイムズから古場さん、一言。
古場:とにかくたくさんお客さんいれてください(笑)
椎木:それはがんばります!いや、この対談でもう30人は確保できましたからね。
古場:ガラパ観に来てもらって、みんなそのまま上のレストランでご飯食べてね。
椎木:お買い物なんかもしてね。
古場:レストラン、チケット提示で割引とかもやりますからね。ゴールデンな流れを作りましょう。いやー、6月はガラパのおかげで上の飲食が潤うね(笑)「ガラパの公演があってよかったー」ってテナントの店長さんたちが皆言うっていう流れをね。
椎木・川口:それいいですねー。
水上:この1週間はイムズのお客様も増えますね。
椎木:めっちゃ紹介しょう。上のレストランで食べて帰って、て(笑)
古場:いや、もうホント楽しみにしてます。
水上:今日はどうもありがとうございました。この対談はリレーしていきますからね。今回は今度やる劇場の方と全般にわたって話してもらいました。リレーの突破口ですね。次も人を引き込む力を持っているガラパなので、いろんな人に手伝ってもらって盛り上がっていきましょう。
2015.04.13
カテゴリー:ガラパ10周年リレー対談
■■僕の人格を形成したもの■■
物心つく頃 神社の境内で祭りの時にやってきたドサ回り劇団のチャンバラ芝居
■■小学生時代■■
『ゴジラ』シリーズ
■■中学生時代■■
『小さな恋のメロディ』『ゴッドファーザー』
■■高校生時代■■
『仁義なき戦い』『サンダカン八番娼館』
■■大学生時代■■
年間に観た200本の映画
『子午線の祀り』は演劇体験の原点
『ブロードウェイミュージカル ウィズ』でミュージカル初体験
映画の道に進むつもりが子どもたちに演劇や音楽を見せる仕事に歌舞伎・文楽・能・狂言・落語といった古典芸能から人形劇・バレエ・ジャズ・オーケストラまで、あらゆるジャンルの舞台芸術を子どもたちに届ける もはや演劇のない生活は考えられません
でも演劇に触れたことがない人のほうが多いのが現実 はてさて、その魅力をどう伝えようか
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