劇ナビFUKUOKA(福岡)

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劇団四季ミュージカル『美女と野獣』福岡公演の仕込みに潜入。

ミュージカル『美女と野獣』は、ディズニー初の舞台版ミュージカルです。

「魔法をかけられた王子は野獣となり、愛する心を取り戻すまでは野獣のままの姿に。しかも、バラの花びらが散るまでに人に愛されないと永遠に元には戻れない。そこで奇跡のように出逢うのが、聡明な娘ベル。しかし、二人の思いが重なるまでには様々な事件が、、、。」

永遠の愛の物語。

その物語を彩るのが、名曲の数々と、モノに変えられてしまった愛すべきキャラクターたちとのダンスシーン。それに、何度見ても仕組みがわからない魔法の数々、、、、、。

アニメーション映画の世界を舞台に再現するという離れ技を実現し、それまでのミュージカルにはない夢と魔法の世界をステージに作り出すことに成功した極上のエンターテインメント作品です。
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(c)Disney撮影:下坂敦俊


キャナルシティ劇場では10年ぶりの福岡での上演に向けて、着々と準備が進められています。その舞台仕込みを取材しました。

劇団四季のミュージカル『美女と野獣』のために運ばれる物量は11tトラック58台分というから凄い!

舞台監督も細心の注意で仕込み作業を進めていました。

報道陣もひとりひとりヘルメットをかぶって舞台上へ。
IMG_7748 (2).jpgのサムネール画像

 

『美女と野獣』では、さまざまな演出が施されています。まさに、魔法の世界。
IMG_7736 (2).jpgのサムネール画像

その秘密の一つが床にあります。舞台の全面に厚さ15センチの特殊な装置が敷き詰められています。いたるところにチェーンやワイヤーが埋め込まれ、すべてがコンピューターで操作されるといいます。

 

 

 

 

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さまざまな場面へ一瞬で変わるのに必要な背景幕やパネルの数は30本。これだけのバトンがある劇場は少ないです。
照明は600台、スピーカーは56台が会場内に設置されて、夢の世界を演出します。

DSC_9775.JPGのサムネール画像
作品の要、野獣の城は、高さが7メートル。バルコニーに立つと、2階の観客席の高さになるそうです。
そして、城の柱には本物のスワロフスキーが50個埋め込まれているとか。本番でぜひ確認してください。

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最新の技術と細やかな美術デザインによって作り上げられた『美女と野獣』の舞台。

ロングランに耐えられる舞台装置の凄さをあらためて実感しました。

舞台裏から、技術スタッフの努力が伝わってきました。

開幕が楽しみです。

取材:水上徹也 撮影:中村剛・大工昭

 

2016.02.29

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仲間由紀恵主演の「放浪記」は、現代に林芙美子を甦らせる好舞台!

ここのエンタメブログへの観劇レビュー、実に2年ぶりとなってしまいました。

ずいぶん怠けていたものですが、このところゆっくりとレビューを書く暇がなかった。というのは言い訳ですが、久しぶりに良い舞台を観ました。

博多座1月公演「放浪記」です。

 

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「放浪記」と言えば森光子、森光子と言えば「放浪記」。まさに森光子の当たり役であり、森光子の代名詞となった舞台だ。今回、博多座での仲間由紀恵版「放浪記」を観て思ったことがいくつかある。

まずは、森光子は林芙美子そのものであったということ。実は筆者は博多座の舞台を観た時はそれを感じなかった。森光子自身、実力がありながらもスポットライトがあたらなかった時期があり、後に「放浪記」の主役に抜擢される。自分の実人生と重なるような林芙美子の半生を演じることで自らを解放し観客の共感を得た。まさに水を得た魚の様に、その後、華やかに活躍する。

しかし、森光子の「放浪記」を始めて博多座で観た時は2003年8月。実に初演から42年が経ち森光子は80歳を過ぎていた。上演回数はすでに1500回を超えるころで、「森光子の噂の名舞台を観れる」ことが嬉しかった。
もちろん、森光子の演技は貫録十分で、作品の完成度も高い。だが、「放浪記」で演じる林芙美子は10代後半から40代。リアリティよりも型で見せる演技となっていた。だから、演技は楽しんで観たが、林芙美子の人生と森光子が重なっていなかった。

そのことに気づかせてくれたのが、仲間由紀恵だ。
仲間由紀恵の林芙美子は若い。カフェの女給を、男に裏切られ続ける女性を、苦闘する小説家を、同世代の女性として、活き活きと演じている。そして、明るい。
林芙美子の役と人生を重ねた森光子と違い、仲間由紀恵は舞台・映画・ドラマと代表作をいくつも持つ国民的な女優だ。演技は折り紙つき。だが、「放浪記」は「別物だった」と思う。それほど作品と演者のイメージが重なっていたからである。その不安を払拭する作品に仕上がっている。
共演陣とのアンサンブルも良い。日夏京子役の若村真由美、安岡信雄役の村田雄浩、白坂五郎役の羽場裕一など、全編に登場するメンバーの役の押さえ方、母役の立石涼子の尾道のシーンでの演技、木賃宿での絵描き役の永井大、福地貢役の窪塚俊介も印象に残った。新しい「放浪記」メンバーが生まれたようだ。

林芙美子は、大正末期から戦争を挟む時期に活躍した。子ども時代は北九州を転々とし、貧しい時代を送った。戦争へ向かう重苦しい時代の中、林芙美子の小説が大衆の心を癒す。「貧しいが清らか」などと薄っぺらの言葉ではなく「貧しさ」の後に「業=欲」を肯定する逞しさ。
この舞台は、今を生きるすべての人が、自分の人生を肯定できる。決して、「貧しさからの成功物語」ではない。
失恋しても、騙されても、食べるものがなくてひもじい思いをしても、会社をくびになっても、それでも生きていける。卑怯な手を使っても、言い訳しても、生き延びる。そんな、「人間の業」を肯定する。人生を生き抜くことがどれほど厳しいものか、そして人生を貫いたとき、どれほど尊く美しいか。そんな生き方を教えてくれている。

「苦しみながらも生きていくのよ。休まず働き続けるの。」
林芙美子の生き方を描く舞台「放浪記」を通して、林芙美子が、森光子が、そして仲間由紀恵が、僕らにそんなメッセージを投げかけてくる。それは苦しくも愛おしいわが人生。生きる勇気をもらえる舞台だ。


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博多座の「大入り祈願鏡割り」(1月5日)にて/撮影:大工昭

2016.01.21

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二月博多座大歌舞伎

2014年年明けの観劇記録です。

ブログを覗くと、2013年は1本も書いてなくて、みなさんから叱咤激励をいただきました。

今年も2月の中盤に入り、このままでは、あっという間に大晦日に、、、とは大げさですが、忘れられてしまわないうちに、最近の舞台をご紹介します。

新春恒例の博多座大歌舞伎。

今年の演目は、昼の部が、『御摂勧進帳(ごひいきかんじんちょう)』、『二人椀久(ににんわんきゅう)』、『封印切(ふういんきり)』の三本。

夜の部が、『傾城反魂香(けいせいはんごんこう)』、『奴道成寺(やっこどうじょうじ)』、『土屋主悦(つちやちから)』、という演目です。

 

実は今年は、博多座が開場して15年という。 ロビーには過去の作品がずらりと並んでいました。

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160本あまりの演目が並んだ様子は壮観です。歌舞伎・ミュージカル・演劇などなど、懐かしい作品がずらり。

記念する第1作は、『杮葺落大歌舞伎』。

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懐かしい役者が揃って、さすが杮落し公演にふさわしい顔ぶれでした。

この時の演目に、団十郎の『勧進帳』と鴈治郎の『娘道成寺』が入っています。

そのお二人の演じた弁慶と白拍子(実は今回の演目では狂言師)を、今年の舞台では、橋之助が軽やかに演じていました。

『御摂勧進帳』、『奴道成寺』とも、いわゆるご存知の作品とは別物ですが、ちがう趣があり、見比べると歌舞伎の楽しさが広がる。

昨年は団十郎が鬼籍に入り、橋之助の義兄にあたる勘三郎が一昨年に亡くなった。これからの歌舞伎界を背負う責任も大きいと思われるが、期待にこたえる大きな芝居でした。

また、翫雀と扇雀も大活躍。

『封印切』での恋しあう二人の駆け引きはなんとも色気があって可愛らしく、『傾城反魂香』の夫婦ではしっかりものの女房と絵師に生きる亭主という、全く違う役です。歌舞伎ならではの表現が、役の個性を一層際立たせていますが、演技力がないとできるものではない。

夜の部最後の『土屋主悦』は、忠臣蔵外伝の作品で、赤穂浪士の大高源吾の逸話をもとにした作品。

1月の歌舞伎座で、『松浦の太鼓』という作品が上演されていましたが、同じ大高源吾の話でも、設定が少し異なって、登場人物や配役が変わって描かれている。偶然、二つの作品に巡り合ったが、見比べられて幸せでした。

2014.02.11

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青年劇場 『キュリー・キュリー』

僕はキュリー夫人のことは、実を言うとあまり知らない。

「中学校の教科書に載っていた。偉人伝の人気も高い。ラジウムを発見した女性初のノーベル賞受賞者。たしか日本にも来日し、多くの名言を残している。  だけど、、、、、、あまりに偉人といわれると敬遠してしまう。」

 

この作品は、そんな人にお勧めの作品。

(11月3日 ももちパレス)

 

マリーとピエール・キュリー夫妻、その出会いからラジウム発見までを舞台化したものだが、二人のやり取りをまじめに見ていては味気ない。

「そんなに献身的に実験室で頑張らなくても」と言うピエールに、

「自己犠牲?私が実験室にこもるのは、自分の悦びのため。快感ね。」

と言い放つシーンが印象的だった。

 

実は、ドラマは、乳母の口を通して語られる。母マリーの姿を、娘が聴きながら進行していく。

実験に明け暮れ、構ってもらえなかったこと、自分は科学ではなくピアニストとしての道を選んだこと、ホントの気持ちを伝えられない悩み。

その娘が、母の真実を知るまでの物語でもある。

 

母(キュリー夫人)は、社会のため、名誉のため、に困難と闘ったのではなく、ほんとうに科学が好きだった。好きなことをやり遂げて、成功した。

ラジウムの実験に成功し、夫妻が興奮して喜びあったとき、マリーは夫に言った。

「最初にすることは、愛し合うことよ。さあ服を脱いで!」

 

自分に素直に生きる、その生き方が、子どもに伝わった時、母子が理解しあえた。

女性は逞しい! そして、この時代(1890年代)に、その生き方を貫いたマリー・キュリーに、人間としての興味がわいた。

2012.11.28

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劇団扉座 人情噺 端敵☆天下茶屋

11月も残り少なくなって来ました。

いろいろ観た作品を紹介するつもりが、観に行く回数に、原稿が追いつかない。

いろいろ言い訳を考えながら、えいっと自分の背中を押してこの原稿を書いています。

 

今回紹介するのは、劇団扉座の『人情噺 端敵☆天下茶屋』。

作演出の横内謙介は先代猿之助のスーパー歌舞伎『三国志』シリーズの作者といえばお分かりでしょうか。

横内謙介が主催する劇団扉座は、『扉座』になってから20年、『善人会議』時代からすると30年にもなる「老舗」劇団。

さて、歌舞伎に登場する小悪党のことを「端敵」というらしく、真の敵「大敵」に比べるとほんの脇役らしい。ちょろちょろと、小賢しい悪事を働くのが、六角精児というので、北九州の新しいホール「黒崎ひびしんホール」へ足を運んだ。 (11月2日)

物語は、「悪役」で飯を食ってきた男たちが、自分たちが主役の演劇を作ろうと稽古しているところから始まる。

その稽古をチェックしているのが、元映画プロデューサー役の六角精児。メンバーの代表の昔の友人ということで、作品についての意見を求められている。そこで、もっともらしいことを言うのだが、本人は、全く関心がない。ところが、公演を準備するために用意した金が600万円あると聞いてから、様子が変わりだす。悪の虫が動き出したようだ。

「悪役」連中は、顔は悪役だが、心は素直で善人ばかり。すっかり六角を信じ切り、金を預け、芝居の演出を任せる。

ところが、金は一日で使い切り、それをごまかそうとして、あの手この手で善人たちをだましていく。

「そこまでやるか」というくらい、人を騙す。裏切る。六角精児は、そんな小悪党がよく似合う。

このシリーズ、もっと悪を主役にしていってはどうか。歌舞伎も悪を主役にした魅力的な作品が多い。

扉座の舞台も、もっと福岡で公演が増えていい。そんなことを考えながら黒崎の街を後にした。

2012.11.24

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でも演劇に触れたことがない人のほうが多いのが現実 はてさて、その魅力をどう伝えようか

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