劇ナビFUKUOKA(福岡)

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劇ナビインタビュー No4 特別版 イギリスの劇場の社会プログラム ②

~文化芸術への参加

どういう戦略を立てて、そういう人たちを文化芸術に参加させたり巻き込んだりしたらよいのでしょうか。

劇場でやっている作品を観客が見に来ることではなく、どういうプロセスで文化芸術ができるのか、実際手を下して学ぶことができる、それが、教育プログラム、コミュニティプログラムです。

 

ギリシャ古代劇を考えてみます。古典の元とは、単純に人々が集まって、そこで何かが始まる。人々が一緒に交わる、そこで何かが始まる。人々が集まる場所、それがギリシャ劇の源でした。

 

<社会包摂のプログラム>

人を集めて、集めた人たちの中でインターアクションをしていくことが必要だと思います。

人々がインターアクションしていく場を提供していくのが、これからお話しする社会包摂のプログラムです。

 


  社会包摂プログラムを、国の制度が出来る前から行ったジュード・ケリー

たしかにブレア首相が社会包摂を唱え始めたのはいいことです。ところが、ブレア首相が使い始める前から、社会包摂が大切だと、そういった活動を情熱をもってしていた文化施設はありました。

私がウエストヨークシャープレイハウスに務めていた時はまだ、ブレアは首相になっていなかった時です。その時に、初代芸術監督のジュード・ケリーが、非常に文化業界の中で影響力のある人、常に意見を求められる人なんです。その方がウエストヨークシャープレイハウスで社会包摂を根本にしたプログラムを組んでいました。

そういう文化リーダーがブレアに影響を与えたという事実があります。

 ep-wyp3.jpgのサムネール画像

写真は『ウエストヨークシャープレイハウス』 (リーズ)

 

声を大にして言いたいのは、社会包摂の企画をするところもあれば、逆に社会排除の企画をするところもあるということです。それは、法令で決まる決まらないという話の前に、そういったことを考えるビジョンと、つくるプログラムにどれだけ打ち込んでいくか。人間の情熱とビジョンが必要です。それは、社会包摂をする人が格差のある社会というのはよくないという最初の情熱やビジョンが必要だと思います。

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ウエストヨークシャープレイハウスでのプログラムの一つ「ヘイデイズ」の様子

 


  ピーター・チーズマンのドキュメンタリーシアター

社会包摂という言葉が政治的な言葉となって、法令となって、それに対して公的助成金が行われることになった前に、こういったことをしていた人の例をご紹介します。

それは、昔勤めていた、ストークオントレントというところにあるオールドビック劇場です。そこの芸術監督をしていたのは、ピーター・チーズマン。ドキュメンタリーシアターを作ることで非常に有名だった。ドキュメンタリーシアターとは何かというと、地域の人たちのいろいろな人生の話をストーリーにして、それをコミュニティの人たちを使って作品化するというものです。

この地域は労働者階級の多い地域で、炭鉱労働者もいれば鉄鋼場の労働者もいれば、スタッフォード社の鉄道を作る人もいる。ブルーカラーであり、労働者階級。その人たちの話。また、炭鉱労働者のストライキの話を妻の目から見て語る話。そういったドキュメンタリーシアターをたくさん作りました。

ドキュメンタリーシアターはプロの役者が地域に出かけて行って、地域住民にインタビューをするんです。例をとれば、鉄鋼工場が閉鎖される、それを防ぐような活動をしていた労働者がいました。そういう人たちのところに出かけて行ってそれぞれの経験を全部聞いてくるんです。一方で、その工場を閉鎖しようとしている政治家とか反対している政治家とか、そういう人たちのところにも役者が出かけていって、話を聞いてくる。それを作品にまとめる。その話を聞いてきて、できた作品は、プロの芸術チームが演出、編集、美術の全てをやり、役者もプロで上演。できた作品は、地域の人が観たらすべて「自分たちのストーリーがこういうふうにすべて作品になっている。」自分たちの人生を作品で観る。その形がドキュメンタリーシアターです。

このシアターは、ストークオントレントの地域の人たちに愛され、しかも「これは自分たちのものだ」って、誇れるもの、それを作りました。

(③へ続く)

2014.08.15

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