ロングラン公演を支えるもの
水上 四季は創立61年ですね。長くミュージカル制作をしてこられましたが、全国8劇場でロングラン公演を行っています。それを支えるものは何ですか。
竹田 演出の浅利慶太が役者たちによく話しているのは、「作品の魅力は台本が9割。それを的確に伝えられることが役者の使命。そこに数%の演出が入れば、お客さんに喜んでもらえる」、ということです。
同じ作品が、いつ見ても変わらず、ぶれないように努力する。それが長く続けていける秘訣だと思います。最終的にクオリティにつながる、同じことを毎日組み立てて行って、基本的な軸は絶対にぶれないで、お客様にちゃんと伝える。という作業を、常に役者が意識してやっているからこそ、お客さんに支持されるのだと思います。
舞台は総合芸術ですので、みんなが好き勝手なことをやったら、成立しなくなります。
あとは、やっている人間たちがスタッフも経営陣も含め、お客様に喜んでもらいたいという思いが強いです。先輩や上司から、受け継がれてきています。ちゃんと引き継がれていくと、次に繋がっていくんだと思います。
水上 綿々と受け継がれてきたということですか?
竹田 四季は、いろんな場所で公演をやっています。いろいろな土地の方に演劇を見てもらうことで、日本全体の文化のすそ野を広げる活動をやろう、という意志の元に創られている劇団です。その趣旨に賛同している人間が、何があってもぶれない、というところが、お客さんに支持してもらっている理由だと思います。
日々、様々なことが起こります。それに対応するエネルギーと言うのは、すごい力が必要です。役者もスタッフも。「えいや」、とやる力を身につけています。そこにつきますね。
水上 俳優の努力とスタッフの対応力が求められるわけですね。
ところで、四季のロングランシステムは日本で唯一確立しているものだと思います。どんな仕組みで行われているのでしょう。
竹田 専用劇場で作品を上演するシステムですね。専用劇場でやる場合、一つの作品を長くやるに越したことはないわけで、どれくらいの期間でやっていくか、まず大まかなところを決めて、目標を作りますね。この期間をこの宣伝計画で販売する。という計画を創っていく。だいたい3ヶ月くらい販売をしていって。様子を見ながら、公演を存続させていく形をとっているんです。
宣伝展開はマス・メディアとパブリシティでやります。1日1日の販売数を見ながら、さらなる計画を考え、1日でも長く公演を続けていくという仕事です。
福岡での公演戦略
竹田 今の福岡公演は、劇場を借りて行っています。何をやるか演目の候補を決めて、この期間が必要だと算出する。劇団四季の専用劇場とはちょっと仕組みが違います。
キャッツはご支持をいただいているので、もっと長くできたかな、という気持ちがありますが、今の福岡にとっては、「この期間じゃ足りなかったね。」と言われるくらいの公演にしたほうが、また新たな展開を考えていきやすいですね。
(写真は、キャナルシティ福岡に設置されたモニュメント。中に入ると何かが聞こえてくる)
水上 専用劇場としての使用を休止、の発表をされた時の衝撃は大きかったですからね。
竹田 一回休止すると言った後に、お客様から非常にお声を頂きました。それだけご支持が頂けるんだったら続けます、といってやってみました。でも来て頂いているお客様の熱気とは裏腹に、思うほどチケットが売れなかった。経営判断として断腸の思いで休止を決めさせてもらいました。
水上 劇団四季の専用劇場は全国に8劇場あります。東京に5つ、名古屋、大阪、札幌と。その中で、福岡の位置はどんなものでしょう?
竹田 福岡は新都市・中都市、と捉えています。マーケットが大きいので、半年から1年くらいの公演を、劇場をお借りしてやる。という位置づけです。
関西につぐマーケットは西でいうと福岡だと、私は思っています。広島の動員数が12万人で、福岡は今回14万人くらい。福岡はやはり優位性がある。仙台10万、静岡10万ですから、町の規模としては福岡のほうが大きいですし、もう少しやりようはあると思います。でも一番大きいのは、一年通して公演するソフトの問題ですね。15年間、専用劇場としていろんな演目を上演させていただきましたから、新たな演目を提供できない。定期的に1年に一回程度お届けする、という位置づけです。
水上 15万人のお客様に来てもらう作品を持ってくることが必要ということですね?
竹田 ロングランをやるには、一つの作品で、公演期間を10年くらい空けないとだめなのかな、と思います。専用劇場だと5年くらいのサイクルになってしまうので、厳しくなります。
『キャッツ』の今の勢いだと年内まではやれる。8か月9カ月は十分やれる街のパワーがある。20万人に届きます。やってみないと分からないから、そこが難しいです。
(続く)
2014.07.07
カテゴリー:劇ナビインタビュー
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でも演劇に触れたことがない人のほうが多いのが現実 はてさて、その魅力をどう伝えようか
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