原作は英国のシャーロット・ブロンテ。有名な作品なので、どんな文芸作品なのかと思って観に行ったが、予想は完全に裏切られた。もちろん良い意味で。 (11月4日 博多座)
主人公ジェーン・エア(松たか子)は、幼いころに両親と死別、愛情薄い伯母と従兄のジョン・リードのいじめにあう毎日だったが、なんと真っ向から対決する誇り高き少女。 寄宿学校に預けられ、うそつきのレッテルを貼られるが、そこで出会ったヘレン・バーンズ=(初めての友人)から、「人を赦すこと」を教わる。
人の愛情も知らず、不合理な仕打ちばかり受けていた少女が初めて、信頼できる人に出会った。やっと生きている楽しさを知ることができた。ところがヘレンは、伝染病で死んでしまう。「死ぬ」ってどういうことなのか。「生きていく」ってどういうことなのか。生涯にわたるテーマを抱える。
やがて大人になったジェーン・エアは、外の世界に出る。そこで、運命の人、ロチェスター(橋本さとし)と出会うのだ。
物語は、ジェーンの語りによって進行していく。
これは、一人の女性の魂の自立を描いた作品だ。
頑なな心を持っていた少女から大人へ。
謎めいたロチェスターへ抱くジェーンの気持ちの変化を細やかにふくよかに、松たか子が語り、演じ、歌う。その存在感!僕はそこにはっきりとジェーン・エアを見た。振幅の大きな役を、抑えた演技で表現していた。
「ジェーン・エア」が書かれたのは1847年。イギリスが大英帝国として最盛期を迎えていた時だ。
「ジェーン・エア」のような女性像は、さぞかしショッキングだったことだろう。
慎み深く礼節と因習を重んじる貴族社会に、「お金もなく、美貌もなく、身分もない」女性がひたむきで前向きな生き方をしていく姿は。
演出は、『レ・ミゼラブル』なども手掛けたジョン・ケアード。
ジェーンを丸ごと素のまま舞台に立たせ、語らせていく。舞台美術も効果的で、なんと舞台の上にも観客席を設えている。魅力的な脇役たちの配役も絶妙。もちろん生演奏だが、オーケストラの場所が最後まで分からなかった。
派手な仕掛けもセクシーなダンスシーンもないけど、芳醇なエンターテインメント作品。そうそう、橋本さとしが大人の味を出して渋い!
「危うく、このミュージカルを見ない人生だった」と悔やまないように!
11月18日まで博多座で上演中。
2012.11.05
カテゴリー:エンタメ
■■僕の人格を形成したもの■■
物心つく頃 神社の境内で祭りの時にやってきたドサ回り劇団のチャンバラ芝居
■■小学生時代■■
『ゴジラ』シリーズ
■■中学生時代■■
『小さな恋のメロディ』『ゴッドファーザー』
■■高校生時代■■
『仁義なき戦い』『サンダカン八番娼館』
■■大学生時代■■
年間に観た200本の映画
『子午線の祀り』は演劇体験の原点
『ブロードウェイミュージカル ウィズ』でミュージカル初体験
映画の道に進むつもりが子どもたちに演劇や音楽を見せる仕事に歌舞伎・文楽・能・狂言・落語といった古典芸能から人形劇・バレエ・ジャズ・オーケストラまで、あらゆるジャンルの舞台芸術を子どもたちに届ける もはや演劇のない生活は考えられません
でも演劇に触れたことがない人のほうが多いのが現実 はてさて、その魅力をどう伝えようか
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