劇ナビFUKUOKA(福岡)

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METライブビューイング ドニゼッティ『愛の妙薬』

オペラの初体験はたしか、モーツァルトの『フィガロの結婚』だった。

新婦スザンナに浮気心を寄せる伯爵や、年若い奉公人から求愛を受ける伯爵夫人などが出てきて、オペラというのは何と男女関係があけっぴろげでおおらかなんだろうと驚いた。

 

さて、『愛の妙薬』。(11月3日 中洲大洋)

 

ニューヨークのメトロポリタン歌劇場(MET)で上演されているオペラをわずか数週間後にスクリーンで観られる『METライブビューイング』の今シーズン第1弾。(1013日撮影、113日封切)

何といっても、世界最大級のMETの素晴らしさ。劇場の存在感に圧倒され、客席の豪華さにうっとりしていると、オーバーチュアが流れ出す。ワクワクと胸が高鳴る。

世界トップレベルの出演者、フルオーケストラでぎっしりのオーケストラピット、満員の客席。開演ベルの変わりに、客席近くまで吊り下がっていたシャンデリアが天井に吸い込まれていく。

 

物語は、恋に焦がれる若者が、愛しい人と結ばれるまでのラブ・コメディ。

気が弱く貧しい農夫ネモリーノが美しい娘アディーナへの思いを告白するが、村に駐屯中の凛々しいベルコーレ軍曹がアディーナへ求婚してしまう。すっかり気落ちしたネモリーノのところに、いかさま薬売りドゥルカマーラ博士が登場。

「飲めばたちどころに恋が成就する愛の妙薬」を高い値段で買い求める。

そこから一騒動あるのだが、最後はハッピーエンドに。

 

他愛のない話である。だが、歌の力で魅了する。

「男って、こんなものさ。だって、好きな女性を手に入れたいでしょ。魔法の薬に頼ってもいいじゃない。」と思わせる楽しいコメディだ。二幕で見せる(聴かせる)男の真実「人知れぬ涙」は、素晴らしいアリアで拍手が鳴り止まなかった。(ライブビューイングは、実際の劇場の臨場感も伝えている)

 

とにかく、音楽、音楽、音楽。ソプラノの美しさにメロメロになり、テノールの甘さに酔い、バリトンの力強さに男の自信を取り戻す。歌声の美しさと迫力に圧倒される3時間だった。ソプラノは、アンナ・ネトレプコが茶目っ気たっぷりに演じ、テノール(マシュー・ポレンザーニ)バリトン(マリウシュ・クヴィエチェン)の恋敵が互いに聞かせどころを披露するが、なんといっても巨漢のいかさま薬売りを演じたアンプロージョ・マエストリが、圧巻の存在感で舞台を牛耳っていた。

 

上映は1週間、毎朝10時からの1回のみというのが、会社勤めには辛いところだが、ライブ・ビューイングシリーズは、2013年5月まである。ぜひ一度は体験してほしい。

2012.11.07

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