銀座・シアタークリエで公演中のロックオペラ、「RENT」。
1980年代のニューヨークが生々しくリアルに描かれる。
生々しいというのは、当時の汚さを露骨に、脚本家ジョナサン・ラーサン本人の言葉を使うと<リアルに>描いていること。
つばを吐き路上にうろつくホームレスたち。
薬物に喘ぐ者たち。
堂々と愛し合うレズビアン、ホモセクシュアルたち。
その中でHIVは一つの大きなテーマであり、登場人物のキーパーソンの一人、エンジェルという青年も途中で死を迎え、観客は哀しみに包まれる。
これが舞台になると絵になるのが、不思議だ。演出家エリカ・シュミットの腕と俳優たちの闊達な演技ももちろんあるだろう。
作品の着想は劇作家ビリー・アロンソンの「貧困や死と隣り合わせの日常」などのキーワードをきっかけに、プッチーニのオペラ、ラ・ボエームの現代化を思いついたところから始まる。
それが1989年で、初演が決まったのが1996年。
7年がかりの作品が集大成を迎えた公演初日前夜、ジョナサンは大動脈癌破裂で死亡。
彼自身の死がミュージカルを伝説にした、と言うと言い過ぎかもしれないが
彼の早すぎる死を惜しむ気持ちは、この作品がブロードウェイのロングランであることと決して無縁ではないと思う。
<自分や周囲の友人たちの<リアル>-売れないアーティスト生活の美学、社会における芸術の重要性、現代アメリカの不寛容、HIV・AIDSの脅威-を「RENT」に結実させた>と語ったジョナサンを忘れないように、そのエッセンスを永遠にするために。
ピュリツァー賞、トニー賞最優秀作品賞受賞も果たした。
音楽もロックやゴスペル、R&Bと、種類も多く面白い。今回生演奏のバンドがまたライブ感を膨らませた。
若者向けといった印象だ。
貧困のどん底で生きる若者たちの苦しみはこの作品のテーマ、シュミットが言うところの<決して希望を失わない>ことによって中和される。それは品のないSMダンサーたちのずぶとさ、仲間たちで夢を語る歌、愛を突き通す同性愛者たち、様々なところに散りばめられている。
恋人のミミが奇跡的に生き返る最後のシーンで、希望が絶望に勝つというのが、実に清々しい。
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