劇ナビFUKUOKA(福岡)

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インタビュー No3 「気になる作品の内容は? そして出演者へ込める思い!」

いよいよ、出演者が決まりました。

具体的な制作発表は6月に行われますので、今しばらくお待ちください。
脚本の中島かずきさんに、作品の構想を伺いました。

そして、オーディションの審査をされた内藤裕敬さんと中島さんに、選考するうえで注意していたことや感想をお聞きしました。


新作の構想について

水上 作品の構想はできているんですか?
中島 基本的にいつもあてがきです。今回も、無理を言ってオーディションを済ませてから考えますとお願いしました。大まかに書きたい話はありますが、キャストを見て、どういうスタイルで行くのか、具体的な芝居の色合いを決めていこう。今はそんな感じです。
今回選んだキャストの皆さんでやるなら、今考えているざっくりとしたストーリーラインをどういうシチュエーションでやれば面白くなるか、重いのか軽いのか,芝居のタッチも含めてイメージを膨らませて考えていく。ここからがスタートですね。
新感線でも先に全てのキャストが決まっていて、その役者さんにどういう芝居をやってもらいたいかを考えていくんです。今回も同様です。


中島2.jpg
水上 具体的なイメージは湧きましたか?
中島 新感線ほど虚構性に富んだ話ではなく、地に足がついた人たちの物語。とは言っても中島流になるので(笑)。でも、いつもとは違うタッチで探っていく感覚がつかめてきましたよ。
新感線では、まず主役を輝かせる題材やシチュエーションを作ります。いわゆるスター性をもった方を主役に呼ぶことが多いので、おのずとそういう形になる。
ですが今回は、町に生きる人たちの群集劇になるのかな、という感触です。最初は、もっと主役を決めてその人間を中心に話を作ろうかと思っていたのですが、どうせならいつもと違うことがやれたらいいなと、オーディションの途中から思い始めました。雑多な人々の思惑が交差する町の話になりそうな予感がします。

水上 架空の町ですか。
中島 もちろん架空の街です。でも、自分が生まれたのが筑豊の田川なんです。自分の思い出とかも踏まえた上での話にしようかなと思っています。今から構想に入るので、できあがりは全く違っているかもしれませんが。(笑)

水上 モチーフとかはありますか?
中島 出身も田川ですし親戚が大牟田の四山鉱にいたんでよく遊びに行きました。西村健さんの「地の底のヤマ」を読みましたが、昭和40年代から現在にわたって大牟田に生きる人を描き出した労作です。僕はまったく違うけれども、自分なりに子どもの時に過ごしてきた炭鉱町へのアプローチをしてみたい。福岡でやるからには、福岡的なものにちょっとこだわろうと思っています。

 

オーディション企画

水上 市民オーディションでの仕事は初めてですか?
中島 東京で「ラフカット」(※注)をやったことがあります。書類審査は無しで応募してきた人は全員オーディションに呼んで芝居を見るのが売りの企画です。僕は3回くらいやりました。「オーディションをやった後に構想に入らせてください」というのは、その時からあります。
(※注:舞台に立つチャンスを探す役者に、「力試しの場を提供」していくプロジェクト)

水上 今回は、オーディションでどこを見ていました?
中島 イメージが湧ける人がいるかどうか、を見ていました。「この人だったら、何をやってもらったら面白いかな」とか、漠然と自分がやろうと思っている作品にどう絡むかな。「あの人たちでやることはこういう事かな」と考えていましたね。

水上 オーディションをしながら、演出家とイメージの共有をされますか?
内藤 イメージは会話しますけど、書くのは彼ですからね。(笑)
中島 要は舞台の上で託せる人かどうかですね。舞台にその人の存在が、我々のイメージを託せる人かな、というのを見ています。面白い人たちが集まったと思いますよ。
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オーディション会場で。応募者の表現に笑顔がこぼれる。(審査員:中島さん(左)内藤さん(右))
 

水上 イメージに合う人がいたということですね?
中島 逆もあります。「その人だったらこんな風にしよう」ということも。そのためにオーディションをしているわけで、伝わりにくいかもしれませんが、両方なんですよ。
そのすり合せなんですよね。書きたい物語もあって、役者の肉体もあって、それをすり合わせる作業をしています。それは今までさんざんやってきたので自分の中に回路としてあるんです。書いているものとその役者の肉体があって、物語が化学反応するという。

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オーディション風景。お二人の真剣なまなざし。

 

タイトルは「浮足町アンダーグラウンド」(仮称)

水上 書き上げるまでの時間は?
中島 芝居だとだいたいプロットから取り掛かって3か月です。

水上 出演者が決まったわけですけど、どんな舞台になりますか?
中島 新感線は様式美だったり、いのうえ歌舞伎は活劇ですけど、今回は活劇にはしないだろう。今回はアクションはないと思う。

水上 内藤さんはそのあたりはどうですか?
内藤 動きたそうな奴がいっぱいいたけどね。(笑)
中島 構造としては活劇ではない。ということですね。どう料理するかはお任せしますけど。

水上 タイトルは決まっていないんですか?
中島 一応、「浮足町アンダーグラウンド」を考えています。現代劇です。
水上 男女半々?身体的能力を求めますか?
中島 だいたい男女同じくらいで、能力というか舞台の上での表現力ですね。
内藤 そうだね。発表の水準というのはあります。なので、稽古のための稽古でなく、芝居を作る稽古ができていくスキルがないと大変ですよ。こちらから出す課題も難しいと思うし、それをクリアしていく力が要りますね。
水上 稽古で、どんなふうに作品に仕上がっていくのか楽しみです。

 

劇作と演出と

水上 美術、音楽は、作家と演出家とどちらが構想されるんですか?
内藤 演出家です。注文するときはありますけどね、事前に。
中島 僕は、渡したらお任せです。(笑)

水上 脚本の演出で、いつの段階で舞台のイメージができるものですか?
内藤 本を読んだら立ち上がってきますよ。それを具体化していく。音響と美術は、2か月から1か月半前に本を読んで、おおまかなイメージを伝えて、美術家がラフを出して、決定して発注。本番の半月前がぎりぎりかな。そこへめがけて舞台化していくということです。

水上 作家は舞台の具体化を見ていくんですね?
中島 自分なりに成立すると思って書くわけですけど、演出家に渡して、よろしくお願いします、ということになりますね。

水上 お二人は、ご一緒の仕事は?
中島 今回が初めてです。
内藤 ゆっくり話したのは初めてだね。飲み屋とかでは若いころから飲んでたけどね(笑)芝居を一緒にやるのは初めて。

水上 今回初めて組まれて、内藤さんにはどんな期待をされていますか?
中島 内藤さんなんで、人と人の関係性が密にあったほうが良いと思ってます。群集劇というのも、演出家のタイプも考えて、そういう軸でイメージしています。

水上 本を渡した後に、イメージのやり取りとかもするんですか?
中島 芝居のいいところは、何回も直しができるところ。役者を見て、稽古を見て、「こうしよう」というのが見えてくる。稽古に入る前に演出家からの直しが入る。稽古に入ってからの直し。本番を開けてからの直しもあるよね。
内藤 あるある。

水上 大野城の稽古にも来られますか?
中島 できれば来たいですけどね。初日の顔合わせ、本読みには立ち会います。あとは可能であれば来たいと思っています。

 

稽古に臨む

内藤 基本は地元のメンバーで創るわけです。外枠のフレームがどういう取り組みかというと、僕はもちろんいい作品作るために台本を読み込んで演出するんだけれど、同時に、可能性がある人たちに、指導しないといけないところはしっかりと指導したい。せめて、足りない部分が足りないとわかるように。

水上 まどかぴあの事業としての目的ですね?
内藤 オーディションをして思ったことは、180人の応募があって、1次で半分になり、2次では3日間で70人見ました。みんな、「役をやりたい。出たい」っていう訳ですよね。ほとんどが選に漏れることは皆わかってる。10数名が発表されたときに、「180人から選ばれた」ということが周りから言われる。これから先、「最後まで残った人ですよ」という見方をされますよ。その人たちが、事業が終わってから、「下手だった」は、まずいじゃない?

水上 そうですね。
内藤 この期間の中で、「俳優とは、こういうふうにセリフと向き合っていくんだ」、基本的なことはしっかりと押さえられるようになって、「やっぱりこの人は違う」と思われるようになって欲しい。その辺も意識してます。
中島 経験値として、そこは大きいねぇ。

 

池田成志さんの役どころ

水上 成志さんが出演されます。ご本人は「自分が主役になるような本にはならないし、なってほしくない」とおっしゃっていました。
中島 ええ、もちろんそうですよ。今回の企画で池田成志主役なら、それはやる意味がない。今回の成志さんは飛び道具。中心は、福岡の役者ですよ。それでも彼が舞台に出たらさらっていくと思うんだよね(笑)。
内藤 成志くんも、今回の企画の趣旨を理解してるし、中に入って、現状にない風を吹き込みたいと思ってるんじゃないかなぁ。彼自身が俳優を鍛えるでしょうね、きっと。
中島 それはあるだろうね。
内藤 僕は、演出家として鍛えるけれども、成志が俳優として鍛える。
水上 昨年のワークショップでも細かい指示をしていました。
中島 彼は考えて芝居創る人なんで。常に考えてますからね。

 

大野城あるいは福岡の可能性

水上 今回、応募した参加者に「今回の作品には選ばないかもしれないけれども、能力の良しあしではない。すごく可能性を感じます。ぜひ続けてください」というメッセージを話されました。
内藤 選ばれていない人にも可能性があるから、ちゃんとした取り組みをして俳優として良い体験をしてほしいね。「いい作品に参加してほしい」、「稽古を積んでほしい」と思う人はいっぱいいました。

水上 応募者が180名という反響にも驚かれていましたね?
内藤 この地域は恵まれてますよ。他の自治体でもお手伝いをしますけど、地元に劇団も演劇やってる人もいない。そういう人を育てるところから始めなきゃいけませんから。
ここには、劇作家もいる。九州戯曲賞に面白い戯曲を書いてくる人がいっぱいいる。180人が応募してくる。選に漏れた人の中でも、今、ちゃんとした基礎をやったら飛躍的に良くなる人、半年か一年基礎訓練したらよくなる人がものすごくいるわけよ。
環境としてそんな中にいるわけだから、その気になれば何でもできると思う。
ここには人がいるわけです。公共劇場がバックアップしていったらもの凄いことになると思いますね。凄い可能性があると思う。

水上 広がっていかないといけませんね。今回のことが続いていくことが大切ですね。
内藤 劇作家、演出家、俳優がいて、劇場がある。ないのは熱心になる偉い人たち、知事や市長さんじゃないのかなぁ。
中島 うん。
内藤 兵庫県は文化都市宣言しちゃったんですよ。今の知事さんが。文化をバックアップしてくれる宣言をしている都市もある。福岡はどうなんですか?
公共ホールの役割をちゃんと理解してもらって、公共ホールがやらなければいけないことが山ほどある。そのために劇場が要るんです。
あとは、演劇プロデューサーが何人かいて、企画を引っ張ってくる。その辺の人がいれば、環境がガラッと変わりますね。

中島.jpg

水上 今回、期待も大きいです。大きな波紋を広げてほしいです。出来上がりを楽しみにしています。
中島 頑張ります。

※この取材は、2月に行われたもので、作品の内容やタイトルは変更になる場合があります。ご了承ください。

 


(取材・撮影:水上徹也 シアターネットプロジェクト代表)
 

2016.04.01

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