劇ナビFUKUOKA(福岡)

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演出家:内藤裕敬さんインタビュー

プロデュース公演 お二人目のインタビューは、内藤裕敬(ないとうひろのり)さんの登場です。


大野城まどかぴあプロデュース公演は、中島かずき(劇団☆新感線座付作家)の新作描き下ろし、内藤裕敬(南河内万歳一座座長)が演出、池田成志が出演という豪華な布陣に、一般オーディションで選ばれた出演者が、「大野城発」の舞台に挑みます。

「集え!演者たち。」と呼びかけたチラシが、福岡の演劇関係者を大いに刺激しました。
「まどかぴあ舞台創造プログラム」として行われるこの事業では、2015年9月から11月にかけて3回にわたる「俳優になるためのワークショップ」を開催しました。


プロデュース公演の演出を担当する内藤裕敬さんも、「“想像力”を養う!俳優ワークショップ【台詞と向き合う編】」を担当しました。
今回の事業へかける思いやワークショップを通してみた福岡の役者の印象などを伺いました。 

(大野城まどかぴあ 小磯係長 同席)

内藤.jpg水上 大野城との関係はいつからですか?
内藤 初めて来たのは10年くらい前です。「公共ホールがネットワークを作って地域と結びつく」という財団法人地域創造が行っている事業です。公演とワークショップを地域で行って、参加した人と劇場とのつながりを深めるという趣旨で、手を挙げてくれたのが大野城まどかぴあでした。それからのおつきあいかな。
水上 その時の内藤さんの言葉がまどかぴあの担当者の印象に残っていたそうですよ。
内藤 なんか言ったかな(笑)
小磯 「僕がちゃんとやりますから」って言ってくれました。
内藤 (笑)。その後も、ピアニストの仲道育代さんのクラシックコンサートを構成演出していまして、何度かまどかぴあでコンサートをしました。

 

まどかぴあの今回の企画について

水上 今回の話は即決で決めたんですか?
内藤 いのうえ(ひでのり:劇団新感線)がやったらいいのにと思った(笑)。でも、いのうえも忙しいし、僕は西鉄ホールや北九州芸術劇場で公演もやらせてもらって、福岡県内の劇場にはお世話になってました。さかのぼればテアトル博多やイムズホールにもお世話になりました。劇団を作った早い時期から九州には来て、古くからお世話になっていましてね。小磯さんも良く知っていますので、微力ながらお力になれたらと(笑)

水上 中島かずき、内藤裕敬、池田成志の三人が揃った公演が実現しました。
内藤 中島君や(池田)成志君との関係は結構古くて、以前の僕のアパートがいのうえ(ひでのり)と同じでした。稽古場でも会って、帰って来て焼鳥屋でも会う。その焼き鳥屋に(中島)かずき君が来て、出くわしていたんです。成志君は僕が書いた芝居に出てくれたりして、共通の友達が多いんです。

水上 池田成志さんの背中を押す一言があったとか?
内藤 そんなこと言ったかな。大野城市の出身だし、会った時、「やるだろ?」とは言ったけど。
水上 その時、成志さんは何と?
内藤 「、、、やります」、と(笑)。その時、「おう、成志君も出るんだな」と思った。

水上 今回のプロデュース公演への意気込みを聞かせてください。
内藤 良いものを作んなきゃいけないと思っています。オーディションで出演者を集めてお祭り的に作って「楽しかった」、では先につながんない。きっちりといいものを作る。演劇の潜在能力を福岡は持っていると思うし、ガチっとやったらいいものができる。それを証明しないとだめです。「やればそこまでいけるんだ。」ということです。
まどかぴあの20周年をお祝いする気持ちもあります。だから色んな人が楽しめるものにしたい。同時に、作品の成果としてしっかりとした結果を残すことが大事だと思いますね。

 

”想像力”を養う!ワークショップ [台詞と向き合う]

水上 ワークショップをしていて感触は?
内藤 参加者は何らかの形で演劇にかかわっている人が多いです。学生時代に劇団を結成して何年か続けている、でも基本的に我流でやっているんですね。それが5年10年やってくると「こんなはずじゃない」「ステップアップできるはずなのに」、と見えない壁に突き当たる。そこで滞る。何故そうなるかというと、根本的なものにふれた事が無いからです。自分に何が足りないか判断できない。基礎を論理的に踏まえていればわかることがあるけれど、それがわからないので無手勝流でハードルが高いところにチャレンジするとか東京に行くとか、憶測で動いている。
今回は、始めの一歩をもう一回確認することをやりました。壁にぶつかっている連中をふるいにかけたら、案の定、セリフに向き合うのに必要な要素のうち、いくつ足りてるのかいくつ足りてないのか、それぞれ思い当たる節があると思う。
俳優だから役作りをするし、台詞と向き合わないといけない。でも、向き合う前に必要なこと、フィジカルな面も含めて、知ってほしい。台詞に向き合う前が足りてないから向き合えないんじゃないか、ということです。
今回のワークショップでも行けるところまで行きます。どこまでいくかな?参加者によるところが大きいですね。

水上 演劇の基礎についてのお話が出ましたが、内藤さんはどこで学んでこられたんですか?
内藤 大阪芸術大学で学んだんですが、教授が言っていることが難しい。秋浜先生って、手ごわい人でした。クラス30人の9割がわかってない。かろうじて2~3人が、「こういうこと?」って。講義の内容は論理的で観念的。自分で劇団を作ってから、「このことが、こういうこと言ってたのか」って、自分で整理して積み上げました。
大学では演劇を知りたいと思っていたので、俳優になりたい連中よりは演劇について幅広く考えたかもしれないですね。
 

プロデュース公演に向けて

水上 プロデュース公演は1か月きっちり練習すると伺っています。オーディションの人と池田成志さんでは差があります。作品に仕上げていく大変さがあると思いますが、稽古場でどんなことがおこるんでしょう?
内藤 わかんないね。僕は、「こういうふうにして」というタイプではないんです。
「あなたはどうやるわけ?」、出てくるものに期待する。僕はそれが出てくる環境を作る役。自分の中から出てくるものを発見しそうな人に出演してもらいます。

水上 オーディションも楽しみですね。
内藤 まだ見ぬ才能に出逢う可能性がありますからね。
水上 中嶋さんの脚本は、出演者のあてがきになるそうですが。
内藤 そうですね、楽しみです。

水上 劇団とプロデュース公演と違いますか。
内藤 大きくは変わらないね。東京でプロデュース公演をやる時と市民参加と一番違う所は、気持ちの持ちようですね。だからまずは、うまかろうがへたかろうが、とりあえずガツンと行くんです。参加している人が「この程度じゃ本番迎えられない」「市民参加だからこんな程度でいい」と思っているその意識を変えないといけない。
「市民参加でこんなのが作れるんだ」と思える、そうでないと何のために1か月稽古するのかわからない。まず意識改革から入ります。
最初から「プロと同じものがつくれない」。とか、「プロと同じ演出を受けられたら嬉しい」とか。その意識を変えないと日常に甘んじるね。
そんなにできない体験だよ。一生のうち何度もできない。その体験を身に染みてもらった方が良い。

水上 今回、劇団の人が多いです。
内藤 ちゃんと自分のステップや何かのチャンスにしたい思いは強いんじゃないかな。
水上 内藤さんは、1か月大野城に泊まり込みで稽古ですね。
内藤 どうなってるかなあ。劇場のこの近所に住んでチャリンコで毎日通ってくるんだろうね。

 

内藤2.jpg
水上 2月にオーディションで、8月が稽古ですね(※注)。気が早いですが、採用が決まった人に、稽古に向けての準備はどんなアドバイスをしますか?


内藤 「走っとけ」くらいかな(笑)


水上 稽古は厳しそうですね。体力が必要のようです。楽しみにしています。ありがとうございました。
 

 

 

 

 

 

 

(※注)このインタビューは、2015年9月23日に行われた「台詞と向き合う」ワークショップの合い間に行いました。

聞き手(撮影も):水上徹也(シアターネットプロジェクト代表)

2016.03.21

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