劇ナビインタビュー No4 特別版 イギリスの劇場の社会プログラム ①

6月に行われた「英国地域劇場スタディツアー」(主催:世界劇場会議)に参加しました。

 

イギリス各地の劇場を訪問しました。

・グラスゴーシチズンズシアター  (グラスゴー)  人口56

・リバプールエブリマンプレイハウス(リバプール)  人口44

・ウエストヨークシャープレイハウス(リーズ)    人口72

・シェフィールドシアター     (シェフィールド)人口51

・カーブシアター         (レスター)   人口28

 

英国の地域でどのように演劇製作が行われているのか。

作品のスタッフやキャストは?

劇場と劇団とは一体なの?

観客はどのくらいいるの?

そして、劇場と社会とのかかわりは?、、、

などなど、質問を思い浮かべながら、イギリスの各地を9日間で巡りました。

 

各劇場の報告をしたいと思いますが、ツアーの最終日に行われたマギー・サクソン氏のセミナーが、今回のツアーの核となる社会包摂(ソーシャル インクルージョン)について解りやすく説明してくれていますので、4回に分けてセミナーの内容をご紹介します。

 

マギー・サクソン(クリエイティブ・コンセプト/キーシアター経営監督)

(イギリスの大規模なクリエイティブ産業に関わる専門家の中でも、もっとも経験豊富かつ成功している1人と評価されている。ウエストヨークシャープレイハウス経営責任者、チチェスターフェスティバル劇場経営総監督などを歴任)

 

司会(衛 紀生/岐阜県可児市文化創造センター館長兼劇場総監督)

今回のツアーのテーマは、劇場がコミュニティといかにリレーションシップをとっていくかということです。1997年のブレア政権の時ソーシャルインクルージョンユニットを内閣の中に設置しました。あらゆる施策に社会包摂という概念をいれました。

社会包摂というのはユニバーサルな社会を目指すということ。だれでもが生きる意欲を持って生きられる。どんな格差の下にいようが、どのような社会環境があろうが、生きる意欲を持って生きられる社会を作る、という考えです。

日本では、2011年に内閣で決定した方針の中に社会包摂という言葉が初めて入ってきて、それ以降毎年のように出ている。でもまだ、「何だろう」くらい。それを劇場の施策にダウンロードされているところがあまりない。

劇場法で、劇場はどんな役割をはたすのか、ということは、きわめて声高に言われるようになった。

じゃあ、イギリスではどうだったか。劇場経営にどのように反映されてきたのかということを、マギーさんにお話しいただきたいと思います。

 maggi (2).jpg

マギー

 

このセミナーに来ていただいて、ありがとうございます。またお会いできてうれしいです。

まず、社会包摂ということをどういうふうに皆さんに理解してもらうか。順を追って説明していきます。

 

 

1997年に、ブレア首相がパブリックフォーラムでこの言葉を使いました。その言葉をブレアは広めました。でも、ルーツはもっともっと昔からに遡ります。

 

 

 

 

<なぜ社会包摂というプログラムをするのか>

公的助成金を受ける劇場では社会包摂をしなければいけない、公的助成金は社会包摂をする劇場に与える、という制度ができました。そのことにどういうふうに劇場が反応していったかということをお話しします。

 

~社会包摂、社会不包摂、社会除外、社会排除について

私たちの住んでいる社会、地域社会、コミュニティというものを見てみると、その中には男女もいる、いろんな種類の人種もいる、宗教の違う人たちもいる、年代の差もある、障碍者もいれば健常者もいる。身体障碍者もいれば知的障碍者もいます。

それを、教育という分野でみれば、このような人たちをひっくるめて対応できるようになっています。教育というのは、有利な立場にいる人にも不利な立場にいる人にも、その両方に与えることになっています。

 

社会の中で有利な立場にいる人、恵まれた立場にいる人というのは、階級が良かったり、いいところに生まれた人、そういう人たちは文化にも恵まれています。

 

私を例にとれば、白人で、お金持ちではないが貧乏でもない、中産階級で、それ自体、恵まれた立場です。

そうやって育ってきて人生を生きてきたので、いろんな文化やいろんな演劇に触れる機会もたくさんあり、教育を終えた後もいろんな文化的なことに参加できたり、そういう生活を続けています。

 

一方で、文化的なものに触れることにできない人たちもたくさんこの国にはいます。

この国には、公的助成金を受けている文化芸術機関というのはたくさんあります。たとえば、ロイヤルオペラハウスもそうです。そこに足を運ぶのは恵まれた人たちが行くことになっています。

この恵まれた人たち、恵まれていない人たち、そのバリアがそこで生まれてくる。そこで、たまたま、恵まれない環境に生まれた人たちは文化芸術にアクセスがないという状況に置かれてしまうことがあります。

 

芸術機関は国民の税金で成り立っています。国に助成を受けている。そこで、その芸術機関が作るものが一部の恵まれている人だけにアクセスができる、というのはどういうことなんでしょうか。

 

~文化芸術から人を排除することとは?

最初の問題です。人間として、そういう文化にアクセスできない恵まれない人たちがいるということはいったいどういうことでしょう。

「いけないことだ」と、もし思ったならば、そのいけないことをどういうふうに恵まれない人が文化にアクセスできる状況を作って行けるのでしょう。

 

ひとつ、紹介します。私はノースハンプトンシャーという地域に住んでいます。そこで、ラグビーがアビーバという企業のスポンサーについている。ラグビーのプレミアシップで優勝しました。

その試合をテレビで見て楽しみました。でも、ラグビーのルールなんて知らないんです。

ゴールが決まったりすればすごく興奮した。自分の土地のラグビーチームですから。勝ち負けが決まらず延長戦になって、すごく興奮しました。

 

 

クリケットも好きです。クリケットを見に行くこともあります。

実は、学校の時にクリケットを練習していて、細かいことを覚えています。選手をしていました。夏にはイングランド対インド戦を見に行きます。

なぜ、文化に関してのセミナーでスポーツの話をしているんでしょう。

スポーツと文化を平行に考えて、お話ししたいと思います。

 

 

たとえば絵を描いたこと、お芝居を演じたこと、文章を書いたこと、そうしたことがない人がどうやって劇場やアーツセンターに足を運べるのでしょう。そういうルールがきっとわからないのかもしれないのです。

そういったアートに触れる機会がなかったということ、それがそのまま、文化に関連のない人生へと続いてしまうということです。そこが一番初めの問題です。

 (続く)

2014年8月11日 14:26  カテゴリー: No4 イギリス地域劇場 劇ナビインタビュー | コメント(0) |

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