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博多座8月公演ミュージカル「エリザベート」トート役 井上芳雄さんインタビュー
【2016年8月 5日】

初代ルドルフ役でデビューして15年、井上芳雄さん演じるトート役とは?


博多座8月公演ミュージカル「エリザベート」にてトート(黄泉の帝王)役【wキャスト】を演じる井上芳雄さんに役作りについてお話しを伺いました。




初代ルドルフ役でデビューして15年、そして今回トート役になられました。どのように演じようと思ってますか?


昨年、はじめてトート役を"創る"という作業をやりましたが、見るのと演じるのとは大きく違って、とても苦労しました。独特の雰囲気のある役ですので、そこに至るまでがすごく難しくて、演出の小池先生も「稽古場だとなかなか雰囲気が出ない。この役は、鬘をつけて、衣裳を着て、メイクをして、あのセットの中にいて、初めて完成するんだ」と仰ってて、「そんなもんかな?」と思っていましたが、実際、舞台に立って、お客様の前で演ってから、「あ、そうか!」と、逆に教えてもらいました。演り始めてからの方が、「トートってこうなんだ。こう演じるんだ」というのがわかってきました。


――演じながら掴んでいく感じですね


あとはお客様の反応です。今日はどうだったとか、あれがよかったとか、その声を聴きながら、「こういうのが喜ばれるんだな」とか、自分の中に残ったものを活かしながら演じています。


――エリザに一目ぼれして一途に思い続けるという役ですが、井上さんはトートという役をどのように思われていますか?


トートは結構不器用なんだと思います。例えば、エリザベートが弱っているときにつけ込んで、もっとつらい状況を作ろうとするんですね。そんな時女性って、つらければつらいほど反発して頑張るという、ある意味男っぽいところがありますよね。女心がわからない不器用な人だなと思います。愛すべき人間的な男。初めて恋をしてしまった不器用な男と思っていただければと思います。


――『エリザベート』は井上さんにとっても、特別な作品ですね。ルドルフ役でデビューして、今回トートになって、『エリザベート』という作品の中で、井上さん自身も成長されてます。


井上芳雄トート役 井上芳雄さん

恩のある作品です。福岡でミュージカル俳優になりたいという夢を見ていましたが、どうしたらいいかわからなくて、芸大で歌を学び、たまたま貰ったチャンスで世に出ることができたきっかけが『エリザベート』だったんです。 いい作品はたくさんありますが、『エリザベート』は人気だけではなく、とても力を持った作品です。しかもその中でルドルフはすごく人気がある役です。その役でデビューさせてもらったからこそ、今の自分があります。 『エリザベート』がなければ、今のようにはなっていないと思います。この作品に今度はトート役で帰ってこれるというのは、運命的な感じがします。


――演出家の小池先生から、トート役を演じるにあたってアドバイスやリクエストは?


小池先生の中では、しっかり形ができあがっている作品です。「常に胸を張っていろ」、「トートは攻撃的な役で、自分の中のそういうものを出していくように」と言われました。 普段の自分にないものなので、こちらから「こういう解釈もあると思う」「こういうことをしたい」と言って却下されたり、「いいね」と言ってもらえたり、いろいろと試行錯誤しながら創っていきました。


――2000年のデビューから15年以上いろいろなステージを経て、今回ミュージカル『エリザベート』に参加することについて感慨はありますか?


福岡でミュージカル俳優になることを夢見ていた自分からは想像できない。とても僕はラッキーだったと思います。たくさんのチャンスを与えてもらって、ファンの方と出会わせてもらった。だから今があると思います。そういう意味では感慨深いですね。


今とてもお芝居が好きなんです。最初はとても苦労しましたが、いまお芝居がおもしろくて溜まりません。今年の僕のスケジュールは『エリザベート』だけがミュージカルです。あとはストレートプレイ。今年その唯一のミュージカルで、しかも博多座に帰ってこれるというのが、節目の記念碑的な公演になると思います。いろいろな事をやらせてもらって、ミュージカルを演じることは自分にとって意味があるし、「さすがミュージカル俳優だね」と言われるものじゃないといけない、という意気込みがあります。


――ルドルフでデビューした時に見ていたトートを実際演じることになると、やはり全然違ったとおっしゃってましたが、実際に演じていきながら、井上トートは変わっていきましたか?


どんどん付け足されて濃くなっていきました。最初はどんな役でもシンプルに演じてみます。最初からゴテゴテと演じるのは、自分ではあまり好きではないので、トートもそういう風に演じようと思ったのですが、人間の役とは違って普通に立って歌って動いてるだけでは、なかなか死神には見えない。鬘も衣裳もすごいので、普段ない要素を付け加えていきました。 一種の様式美というか、歌舞伎や宝塚に通じる"魅せる"という意味のプラスアルファが必要だと感じました。それは常に一緒にいるトートダンサーを操っているように見せるためにも必要でした。


――トートの人間性、内面の部分についてはどうですか?


井上芳雄

普通の役にはあるバックボーンがトートにはほとんど無いんです。だから、自由でもあるし難しくもある。バックボーンがあった方がわかりやすい。 それ以外は、「死神だから」とか僕はあまり考えないようにしています。むしろ人間よりも感情的じゃないかと思うんです。エリザベートを愛してからは、エリザベートのことだけを考えていればいい。他の"日常"は彼にはないので。だからものすごく過剰な気持ちを持っていると思います。トートというのは、ある種の怨念とか魂みたいなものが具現化したら、ああいう形になっていた、というだけで、"想いが動いている"ようにしたいなと思いました。


――16年経って、『エリザベート』という作品に対する思いは深まりましたか?


エリザベートという女性がとても現代的で魅力的であること。ただ見方によっては彼女はなにもやっていないんですよね。反抗もしたし、屈しなかったけど、何かを成し遂げたわけではなく、暗殺されてしまう。とても気の強い女性だったと思うけれど、決して偉人ではないと思います。だからこそ、こうして共感を得ているのかなと思います。そのエリザベートの描き方がとても優れている作品だなと思います。


――博多では初めての新演出版になりますが、井上さんがおススメするポイントはありますか?


装置も衣裳も一新され、とても豪華です。エリザベートは世界観が大事だと思うので、劇場に入ってその装置を観た瞬間に、その世界に入り込める。大きな棺3台がメインになっていて、その棺の周りでいろんなことが起こる。その世界感がものすごく魅力的だと思います。また、キャストが若返って新しくなり、若いということはもろ刃の剣でもありますが、今までにはないエネルギーがあります。良いところを全面に押し出して、魅力的なキャストがこれまでのイメージに屈することなく、臆することなく、自分の役をみんなが作っていると思います。


――いろいろなお仕事をたくさんしている中で、ミュージカルの醍醐味をどう感じていますか?


エンターテイメントであると思います。いろんな要素がある。ドラマだし、音楽も重要だし、見せ方もありますが、非現実の夢の世界にお客様を持っていく力がとても強いものだと思います。いろいろな表現があり、日常のように演じる芝居もある。 ドラマがありながら、さらに音楽の力でどんな世界にも連れて行く、何度でもそれを味わえるのが強みだと思います。


―― 一番好きな楽曲は?


演じていてこれが好き、というのはないんですが、自分で演じていて気持ちがいいのは"最後のダンス"です。Sっ気が全開するというか。ソロなんですが、エリザベートと踊っているというか、投げたり怒鳴ったり...自分がどちらかというとSだと思います(笑) なかなかそういう役もないし、音楽もすばらしい。いつも高揚感があります。

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