劇ナビFUKUOKA(福岡)

劇ナビFUKUOKA(福岡)
劇ナビ&ガラパ合同企画 リレー対談第3弾
万能グローブガラパゴスダイナモス10周年記念 リレー対談第3弾
 
演出家:川口大樹 VS 映画監督:竹清仁 
~福岡から全国へ、そして世界へ~
 

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川口大樹(万能グローブガラパゴスダイナモス 脚本・演出)

竹清仁(モンブラン・ピクチャーズ株式会社 代表取締役・監督)

進行 水上徹也(株式会社シアターネットプロジェクト 代表取締役)

 

水上 今回は映画監督の竹清仁さんにお越しいただきました。竹清さんご自身のされていることを聞かせて頂いてもいいですか?

竹清 僕がやってるモンブラン・ピクチャーズは、業務としてはクライアント半分で、CMを作ったりとかモーターショー用の映像を作ったりとかホークスビジョンの演出映像を作ったりとか、CGからアニメーションなどまあ色々多岐にわたっています。監督、プロデューサー、CGアーチスト、アニメーター、コンポジターなど、総勢15人一通りそろっていて、コンパクトなチームでなんでも作りますよという会社ですね。あと半分はCGアニメーション映画を作る会社です。僕は監督で、一本目が『放課後ミッドナイターズ』っていう映画を2012年に公開しました。今、数本の企画を進めていて、そのうちの一本の脚本を川口くんに手伝ってもらってます。

川口 僕は最初に出会った感じとしては、脚本のことを一緒に考えたいって紹介して頂いたんで、物書きさんっていうイメージがあります。もう出会って2~3年くらいになりますよね。

水上 それは竹清さんの方からオファーをしたんですか?

竹清 元ギンギラ太陽ズの中村卓二君が、前に僕が作ったアニメ映画に出ていて、『面白い話を創りたい』って言ったら、川口くんを紹介してくれた。

川口 卓二さんの紹介で連れて行ってもらって。僕最初に会う時、相当緊張しましたね。

竹清 えーそんな感じに全く見えなかったけど。

川口 いやいやいや、監督ってちょっと怖いイメージないですか?それで、お会いしたら物腰柔らかというか。特に映画の中でもエンタテイメントであるとかコメディが好きだという話を聞いて、すごくそれがしっくりきた。だから、すごくスムーズに最初から親しくなれたな、と僕は思っています。それが、最初ですね。もう2年くらいになりますけど、竹清さんの中にざっくりとある一番最初のイメージのところから一緒にやっているので、すごく勉強になっていますね。僕、舞台の脚本は書いてましたけどアニメの脚本を書くのは初めてでしたから、なんかその2つのジャンルの違いというか、同じ脚本を書くとしても映画での書き方であるとか舞台での書き方であるとか。似ているところもあるけど違うところもあるしっていう。それが僕は勉強になりつつ、楽しくやりつつ、です。

 

映像と演劇の共通点

 

水上 ドラマっていう意味では共通してますけど、映画の場合って時間も空間もなんでもありですからね。演劇、特にガラパの舞台はシチュエーションコメディで一つの空間ですから制約がかなりありますよね。

川口 そうですね。

no3-42.jpg竹清 でも、一緒に進めているやつもそうなんですけど、CGアニメーションって実は演劇にすごく似ているんです。どんな表現物も予算がないと作れないじゃないですか。お金がないと。日本の場合、マーケットが主に日本の中だけだってこともあってそんなに予算をかけられないんですよね。そうなると内容を工夫しないといけない。で、CGアニメーションの場合は背景を全部作らないといけないんですよね。演劇で言うと建て込みですよね。舞台セットを作らないといけない。ただ、作れば作るほどお金がかかるのでこれをコンパクトにするのが一工夫なんですよ。CGアニメーションは限られた予算しかないから、ある意味密室劇みたいな感じでやるんですよね。だから、すごく似ているんです。

水上 なるほど、生の映像だったらスタジオにセットを作りますが、CGアニメはいわゆる画面にセットを作らないといけないんですね。

川口 そこは実は共通していて。アニメだったら自由にポンポン変えれそうなものだなって思うけど、でも逆に僕はそういうのが苦手なんですよね。限定された空間の方がどちらかというと得意だし。そういう意味ではちょうどよかったな、って思いますね。

竹清 ある意味、今一緒にやってもらっているやつもシチュエーションコメディですね。キャラクターが人間以外の奴も色々出てくるっていうジャンプの仕方で。

水上 演劇は生の人間がやるけど、アニメーションはキャラがたってるキャラクターがやる。どう動かすかとか、その辺はちょっと違うんじゃないですか?

川口 そうですね。そこは全然違うけど、それは逆に楽ですね。限られたシチュエーションの中という縛りさえ守ればカットは割れるわけですし。あとアニメーションだからちょっと無茶なことも出来てしまうわけだし。普段舞台で書いている時に、あーここで屋根からびゅんと落ちたら面白いのになーとか、生身の人間だったら大変だったりすることがブレーキをかけずに書けるってのがすごく面白かったですね。それはなんか発散になる(笑)人間に対する限定をちょっと飛ばせるから、それはいいですよね。銃撃戦とかレーザービームとかも書いちゃってもいいわけだし。

竹清 まあ、大変なんですけどね(笑)大変だけど、出来なくはない。

川口 でも水はだめなんですよね。水の中は難しい。

竹清 水はね非常にお金がかかるんですよ。鬼門ですね。こういうちょっとしたコツはいろいろあるんですね。これ面白いでしょ?っていわれて、面白いけどねーお金がかかるんだよねーみたいなことは、まあちょいちょいありますね(笑)

水上 じゃあ制約もあるってことですね。

竹清 あります。やっぱり全ての表現物って制約との戦いですよね。でも多分制約があった方が面白いものが書ける。

川口 そうですね。確かに縛りがあった方が燃えるし、逆に縛られなかったら、例えば登場人物を無限に出していいよとかっていわれるとどうしたらいいかわかんなくなる。だから竹清さんと一緒に作ってた時も、土台の設定をかなり密に組んで、キャラクターの性格や関係性はかなり考えましたね。そういう作業もかなり演劇と似てるなって思いましたね。

竹清 頭から書き進めて言ったらこんなラストになっちゃったって演劇ってあるじゃないですか。映画ってそういうのはなくて、逆算なんですよ。ラストシーンがあって、そこから構築していく。

川口 この作業は僕は普段あまりやらないんです。いわゆるプロットと言われるやつですよね。脚本を書くにあたって避けて通ってきたとこです。

水上 そうなんですか?

川口 避けて通ってきましたねー。プロットが出来たらもう書けたも同然だって(笑)。人にもよると思うんですけどプロットを書いちゃうとつまんなくなるって思うんです。

 

仕事を通しての影響

 

水上 竹清さんとの仕事は影響があったんですね。

川口 そうですね。物語の構造の所はちゃんと考えましたね。竹清さん映画がものすごくお好きだから。

竹清 (笑)すぐ映画の例がでちゃうんだよね。川口くん意外と観てないから、レンタル屋でこの映画借りてみといてって(笑)

川口 名作と言われるものにはある程度共通する構造があって、映画は映像がいくらでも残っているから構造の分析がすごくし易い。演劇って基本的に映像として残すものではない。

竹清 僕はこれはビジネスの話で、観るお客さんの数の違いなのかな、と思っていて。映像は複製して色んな所に広げられるから、マスの大衆に向かってのエンターテイメントじゃないですか。大枠は大多数の人に観てもらうもの。そうすると雛形みたいなものが出来ますよね。川口くんとはその辺の話もいっぱいしましたね。それを踏まえたうえで僕らならではの面白いものを作ろうという。

川口 そうですね。だから僕はどちらかというとそっちの世界の方に足を踏み入れて考えました。演劇の方法論ではなくて映像の方にシフトして考えて、すごく勉強になりましたね。

水上 作品を作るときのモチーフはどうですか?映画の場合だと誰でも興味を持てるようなものでないとお客さんって来てくれないじゃないですか。今度の『ひとんちでさよなら』のモチーフでのスタートラインはどんな風に思ってる?

no3-34.jpgのサムネール画像川口 元々がエンターテイメント思考で、出来るだけ沢山の人に受け入れられたいという思いは元々持っているので、それをよりひっかかりなく出すということは考えています。その方法論の一つとして、内的問題・外的問題とかそういう構造の問題があります。物語が始まるときに登場人物の状態がこうであって、最後にはこうであるべきだっていうことを今まで意識せずに書いていたんですけど、竹清さんと一緒にやるようになって、そういうのを教えてもらいました。登場人物の変化がストーリーの中でどうなるのかっていう細かいやり取りは演劇の流儀でいかないと難しいところはあるんですけど、すごくでっかい枠組み、物語をこういう風に持っていくんだ、それでお客さんにこう捉えてもらうんだっていう考えかたは、影響を受けた部分ではあると思いますね。

竹清 でも、元々そんな感じで作ってたんじゃない?

 

創作をロジカルに語ること

 

水上 何回かガラパの作品は観られているんですか?

竹清 僕はすごく好きです。シチュエーションコメディで、キャラが立ってて、あとクレバーに全体の構造がカチッとなっていて。僕もそういうのは好きなので、毎回面白いです。一緒にやってることで言語化されたってことかな。

川口 そうですね。すごく明確になったっていうのはありますね。映画とか舞台とかみて、『面白い』と思う作品と『そうでもない』と思う作品があるじゃないですか。僕は何が違うのかってことが言語化できない、感覚でしか捉えていないんですよね。だから竹清さんと話すとすごくわかりやすいんですよね。

竹清 いや、難しいですよ。未だに『面白いって何か』っていうのはね。これがわかったら大儲けですよ。

水上 (笑)確かに

竹清 人によっても違うし。

川口 外国では理論化されて、分析されているんだっていうことが、面白かったですね。よくそんなこと知らずにやってきたなと思いましたね。演劇にも脚本の書き方みたいな本があるんですけど、やっぱりよくわかんないんですよね。あまりロジカルではない。僕は結構ロジカルなタイプなので、理屈で知りたいタイプなんですけど、竹清さんとしゃべってたらロジックで組み立てられていて、なるほどって思えるんです。

水上 どこからそういう経験を得たんですか?

竹清 『放課後ミッドナイターズ』っていう一本目を作った時には正直わかんなかったんですよ。いや、わかっているつもりだったけど今から振り返ってみるとやっぱりわかってなかった。脚本を書いてくださったのが小森さんという『海猿』とか『S』っていう作品を書いている方で、福岡に居る方ですけど、その小森さんに一本やっていただいて、作った後にこういうことなんだなぁ、とそれから色々発見もしたんです。

水上 ロジック的な竹清さんの作品の作り方はどこで学んだんですか?

竹清 ハリウッドの脚本術を書いた本が沢山出てるんです。それぞれ共通点とそれぞれの書いた人の視点が書いてあるんですけど、きっちり体系化されてる。要するにその話ですね。

水上 ハリウッドは確かに世界の映画工場ですからね。色んなノウハウや経験が詰まってますよね。

竹清 みんなそれにのっとって作るものですから同じになってきてる裏腹な所もあります。ただ、一回作法は身に付けた上でにじみ出ちゃう個性が勝負じゃないですか。だからきちんと勉強しようと思って。

水上 じゃあ今、それを二人で共有してるんですね。

川口 初めて竹清さんに会った時、ちゃんと勉強しようと思っていた頃で、竹清さんが言ってた本と全く同じ本を持っていたんです。それで、これはすごい、ぴったりだと思いました。僕も、何でも型を知ってから壊すことができないとダメだと思います。演劇やっている人って、人によるとは思いますけど、商業的に寄りそうことを嫌う傾向ってあるじゃないですか。別にそれが悪いというわけではないんですけど、僕はわりとそういうことに抵抗がない。むしろそういうテクニックがあるのなら、それをちゃんとものにして作品をどんどん作りたい。土台を作るところでまずはきちんとした知識とテクニックがあってそこから変化球が投げれるようになったらいいなって思います。

水上 そうですね。日本は国立の演劇大学がないですね。音楽はあるし、映像もいくつかありますよね。演劇は役者も演出家も特に体系化されていないってことですね。そういうことを教える機関や施設がないですから。だからそれぞれがそれぞれのメソッドを持ってやっているのが現実ですよね。

川口 だからこそ、突然変異みたいなものが生まれやすいってことが演劇にはあると思うんですけど、効率が圧倒的に悪い。竹清さんは社長ですから、作品を作ることがちゃんとお金と結びついていることがとても良いと思いますね。演劇って、お金とどうしても縁遠い。

竹清 それは向き不向きですよ。川口君の場合はお金と結びついているってこと。

水上 いいじゃないですか。演劇産業、やりましょうよ。

川口 そうですね。本当にお金稼がないと皆辞めてっちゃいますからね、単純に。

水上 演劇が職業化されているところって東京だけだからね。

川口 そうですね。

 

福岡で仕事をするということ

 

竹清 福岡はそういう文化がないですからね。

水上 『福岡は芸どころ』っていう言葉があるんですけど、福岡はやりたがりが多いんですよね。だからそれを作品にしてお客さんを集めてそういう仕掛けを作るかって言ったら、それは福岡ではやってないですよね。それをやる人はどんどん福岡の外にいっちゃうんですよね。

竹清 まあ、映像も一緒ですけどね。

水上 だから福岡でそれをやるっていう動きがないんですよね。

no3-44.jpg竹清 福岡に限らず地方はっていう話ですよね。

水上 竹清さんは東京でなく福岡で活動をされている。それはあえて何か意味があるんですか?

竹清 僕はかれこれ20年映像の仕事を福岡でやっていて、始めた時は『いやーそんなの福岡ではできないよ』って言われてたんです。その頃はちょうどインターネットが使えるようになったくらいの時期だったんです。だから特徴があって良いものさえ作れば福岡でも出来るだろうと思って、そしたら案の定上手くいった。それで、同じ感じで映画や映像エンターテイメントも、これからは携帯で観るようになるだろうし、テレビも変わっていく。もう、地方でも充分出来るだろうなっていう匂いがあるんですよ。今、チャレンジしているところですね。

僕は札幌に産まれていたら札幌でやっていたと思う。でも僕は福岡にいるし、住み心地がいいこともわかっている。住み心地を犠牲にしてまでやりたくないな、と。ちょっと語弊がありますけど(笑)両立できればそれに越したことはないし、福岡は移動の便もいい。空港が近いし本当にストレスないですから居続けてます、というくらいのものですかね。まあ、今からセルアニメを作るには不利ですけど。CGアニメは始まったばっかりなのでみんなチャレンジャーなんですよ。だから、やり方も含めて作ればいいやって思っていて無謀と言えば無謀ですけどやれないことはないと。

水上 福岡らしさとか地方の匂い、山笠とかコンテンツを盛り込んだり、そういう作り方もあるじゃないですか。そのことは考えたりしますか?

竹清 むしろ逆ですね。僕らが作りたい映像は、日本だけじゃなくて世界中の人が観て面白いものを作るっていうのを条件にしています。マーケットが日本だけじゃないから、東京じゃなくてもどこに居てもいいんです。

水上 川口君はどうですか?

川口 そうですね。僕もやっぱり産まれた土地だっていうのがすごく大きいです。演劇は持ち運びが不便なので東京とか大阪がいいとは思うんですけど、東京は演劇でいえばとにかく数が多い。求められている数に対して、圧倒的に分母と数が釣り合ってないのですごい勢いで消費されていくっていう話はよく聞くし、東京って何かに追われるように必死に作品を作って生き残った劇団がやっていける世界だと思います。

もちろん東京に産まれていたらその環境の中でやったんでしょうけど。福岡は良くも悪くもじっくり腰を据えて作る環境があるし、これは演劇に関していえば武器だなって思います。消費されにくい。誰からも求められないっていうことなので欠点でもあるんですけど、逆にいうと未開拓の場所なので福岡のエンターテイメント業界に入り込む余地がある。まだ大半の人が福岡にも演劇があることを知らないわけですから。だから、僕にとっては誰もまだやっていないということが一番の魅力ですね。今なら一番になれるしパイオニアになれる。

水上 フロンティアですね。

川口 正に、フロンティア。歴史に名を刻めるんじゃないかっていう。東京で名を刻もうと思ったらそれは大変ですけど(笑)福岡っていうこの未開拓の場所を開拓していく、これは作業としてとても楽しいことだなと思うんですよね。ガラパで芝居作っていて思うんですけど、僕は演劇観たことのないお客さんにこそ観てもらいたいって気持ちがすごく強い。で演劇観たことのないお客さんがガラパの芝居を観て演劇って面白いねっていわせたい。この僕の思考と福岡っていう街はすごくマッチしている。人口もそれなりに居ますし、街もあるし劇場もある。同時に未開拓の場所っていう魅力をすごく感じますね。

no3-51.jpgのサムネール画像水上 東京には劇団がいっぱいあって、役者もいっぱいいて、その中でちょっと面白いのがあったら、プロデューサーに目を付けられてテレビに出たり映画に出たり、色んな番組があるから仕事として関わったり、業界的なシステムが成り立っています。東京は局がドラマを作ってるけれど福岡は少ない。

だから福岡の劇団は劇団活動だけでやっていきますね。だけど、一週間の公演を一ヵ月間に回数を増やすとなった時に福岡のマーケットでお客さんを増やすことが出来るのかっていう話が第一回目の対談で出ていました。福岡のお客様プラス色んな地域から観に来るお客様が福岡に集まることで成り立つ。それが僕の一つの成功イメージなんですよ。まずは福岡にいっぱいファンを作り、こんな劇団があるよっていうのを東京や大阪や色んな地域に伝えるという。人気のある役者目当てにお客さんが来るといったものとは違うやり方をしないといけないのでは?

竹清 僕は同じじゃないかと思いますね。どれだけ多くの人がこれをお金使ってでも観たい、時間使ってでも観たいと思うほど面白いものを作るか。そして作るだけじゃなくて知らせるか、ですよね。宣伝方法が大事です。それで、ビジネスとしてきちっと成立するっていう。じゃないと継続できないですからね。

水上 それを今、監督兼代表でやっているわけですね。

竹清 もう大変ですよ。なんとかかんとか(笑)でも、結局リスクを負わないとできないってことだけは間違いないので。自分でしょってやるしかない、ってことですよね。

 

成功の定義

 

竹清  すごく聞いてみたかったことがあるんだけど、川口くん集客で言うと福岡では一番目?二番目?

川口 二番目ですかね。

竹清 成功している部類ってことですよね。

水上 そうですよね。

竹清 これから1020年自分のペースで福岡のお客さんのパイで福岡のお客さんが払ってくれる予算の中でずーっとやるのがハッピーなのか、そこで上手く行ったら東京に行くのが成功なのか。成功の定義って人それぞれだと思うんですけど、その辺どうですか?

川口 劇団がずっと福岡にあり続けるってことが一つ成功の定義であるのかもしれないです。ヨーロッパ企画っていう劇団が京都にあるんですけど、ガラパを旗揚げするときにそこを目標にした。シチュエーションコメディという作風も劇団の成り立ちもすごく好きで。あそこは劇団として作品を作るだけじゃなくてコンテンツを沢山作っている。自分たちで映画祭みたいなことをやってみたり、テレビ番組を作ったりしてます。僕は演劇だけをやり続けたりという感覚はあまりないんですよね。

竹清 物書いていたいってよく言うよね。

川口 そうですね。理想は書くことが一番やりたいです。でも劇団という場所もすごく好きなので、一番いいのは劇団の公演は年に一回とか二回、本公演をやりつつ、やってない時期は劇団でもっと別のコンテンツ、例えばテレビでもいいかもしれないし、それぞれが俳優として東京に行って活動してもいいかもしれない。

そういう形がすごく理想だなって。でやっぱり僕は書くことを重点的にやっていきたい。小説も書いてみたいし、テレビの台本も書いてみたい、それを福岡でやれてたらすごく理想的ですよね。あくまでも福岡の劇団だっていうこだわりはあるので。福岡の奴らがすごいもの作って、それを東京からいろんな人が観に来る、そういう漠然としたイメージはありますね。コンテンツはいっぱい作って行きたい。

水上 人の話になりますが、ガラパも、制作の力、プロデューサーの力は大きいですね。

竹清 プロデューサー超大事。プロデューサーの腹の決まり方次第ですよ(笑)

水上 今はそれこそ作品は川口くん、代表は椎木君っていう二本柱で作って、そこに制作の橋本さんの力が入って今みたいな形になって来てると思うんですよね。これからの10年以降の展望で言えば、人の力というのが必要ですよね。

川口 そうですね。福岡には、なんか面白いことしている人が意外にいる。竹清さんと、僕はたまたま卓二さんが紹介してくれたから繋がれたけど、福岡って、色んな人達が繋がっていく仕組みがないですよね。沢山の人と出会って行けたらすごい力が生まれるんじゃないかなっていうのをここ最近考えるようになりました。演劇に限らず、それぞれが自分のいる世界に閉じこもりがちになって見える範囲が狭くなるから、僕自身いつも反省するところです。だから違う世界の竹清さんと話をしているのはいつもすごく解放されます(笑)

竹清 福岡は面白い人がいっぱいいるし、ちょいちょい面白いことがあるんだけど、そこで終わっちゃうことも多いんですよね。自戒も含めて。でも、もうちょっと大きいところになっちゃうと、居心地の良さが逆に弊害になっちゃうときもある。良い悪いじゃないです、本当に。ただ、そういう風な雰囲気だから、気を付けないといけないなって思ってるところはあります。このくらいでいいなって思ったらもう終わりだなって。福岡がではなくて、自分の中がですね。

 

アンテナを外に向けて

 

水上 竹清さんの中では、刺激とか情報とか東京のチャンネルはあるんですか?

no3-4.jpg竹清 僕自身は仕事もあって2週間に一度は東京に行って色々な話をしてますし、ここ2年は割と定期的に海外に行って、一緒にやってくれるスタジオとかチームをリサーチして、常に外に目が向くようにしています。ちょっと演劇から話が外れちゃいますけど、この2年間海外に行って、もう超ショッキングでした。日本だけが日本のマーケット用にエンターテイメントを作っている。海外は少なくとも自分の国以外の所も広いマーケットとして捉えて、それ用に内容を作っているんです。

水上 具体的にはどこですか?

竹清 アジア一帯、それからヨーロッパ。びっくりしたのは南アフリカもCGアニメとか作ってて、南アフリカでペイするの?っていったら、いや、僕らのマーケットはヨーロッパだ、と。北米はハリウッドとかもあってきついからEUでペイするって言ってました。内容も人種を越えて理解できるようなものにしている。だからもう商品ですよね。まあ当たり前なんですけど。今の所、日本ではそういう視点ではあまり作っていないですね。

水上 今の話で言うと、確かに演劇でも、韓国は日本の半分しか人口がないから完全に外に向けて作ってますよね。だから台詞のない(=ノンバーバル)演劇を作って、とりあえず日本に持ってきてますね。日本が一番マーケット層が大きいから。日本の場合は日本で作ってそれを他で、というのはあまりない。

川口 僕は自分の作るものが言葉に依存しているものなのでそこまで興味はないんですよね。でも、うちの代表の椎木が前に公演で韓国に行ったんですけど、向こうの人たちはとにかく笑う、と。良くも悪くも、笑いってものに関してはかなりウケがいいらしい。特にこっちでいうところのドリフみたいなことがすごくウケる。だから実はうちの芝居は韓国でいけるんじゃないかって椎木が言ってました。言葉に依存しない、スラップスティックコメディ、チャップリンみたいな見た目で面白いもの、それをもっとコメディにふっているものとか。今、日本から韓国にいってるものって芸術性の高いイメージがあります。身体性のある作品がいってるんですけど、その身体性をもっと笑いによせた作品で持っていくってことはまだやってるところはないんじゃないかなという気がする。分析は出来ていないし、お国柄もあると思いますけど、僕が聞きかじった限りでは、笑いに対しては韓国には通じる可能性がある、そういうイメージはありますね。前例がないのでそれを確かめる術はないんですけど。いずれ挑戦してみたいなという気持はありますね。

竹清 韓国ってオフブロードウェイみたいなとこがあるんでしょ?

水上 ありますね。大学路です。空間的にはガラパがやってるくらいのサイズのものがたくさんありますよね。

竹清 そういうところでぴょっとやったらいいのに(笑)

川口 ぴょっとね(笑)劇場いっぱいあるっていいますもんね。なんか笑いが通じるならちょっとやってみたいとか思いますけどねー。

水上 言葉がね。役者は皆ハングル語とかで(笑)

no3-12.jpg川口 そうですね(笑)その言葉の部分をどう処理するかですよね。どう伝わるかっていうのが全然未知数だから、ちょっと試してみたい気はしますけど。

水上 やったらいいんじゃない?実験だから(笑)

川口 そうですねぇ。実験か。やってみようかなぁ・・・。まあ、近いですからね福岡。興味はあるんですよ。笑いはやっぱり武器だから、それが通じるんだったらそれはいいですけどねぇ。何が面白いんだろ、韓国の人達って。何見て笑っているんだろう。

竹清 それを確かめるために一回やってみる(笑)

川口 じゃあちょっとスタンダードな笑いで・・・じゃあ、次の10年はどっかで海外公演を。

竹清 いいですねー。

水上 少なくともじゃあ福岡から一時間半程度で行ける海外をくくって、そのエリア内をまず制覇するとか(笑)ソウルでしょ?上海とかあと台湾とかいいかもよ。

川口 誰もやってないからなぁ。

竹清 いやいや、だからいいんじゃない。

川口 そうですよねー。それこそパイオニアですよね。

水上 もう日本ツアーじゃなくてワールドツアーだよ。

川口 それこそ殺陣とかする劇団は行ってるイメージありますね。日本っぽいものを持っていくっていうのは昔聞いたことがあるけれど、そうじゃないものもいいですよね。僕どちらかというと、あんまり福岡とか博多とか日本とかに依存したものを作る気はないんですよ。博多弁とかを使うこともあんまり興味がない。どこに持って行ってもウケるものを作りたいですね。東京とか大阪とか、もちろんそれ以外の地域もですけど。そう考えると海外もおんなじ視点でみても何ら問題はないってことですよね。

水上 一回やって成功したら海外に売れるわけでしょ?

川口 お金がね、もらえるならやりたいですね。

竹清 水上 (笑)お金があるところに行きましょう。

 

福岡のメリット

 

no3-31.jpg川口 演劇の人ってお金稼ぐのあんまり得意じゃないから。でも演劇って労力は使ってますからね。

竹清 さっきの幸せの話になっちゃうかもしれないけど、大塚さんっていう有名な声優さんが本を出していて『声優にだけはなるな』って(笑)。声優って職業だと思うから辛くなるんだけどそれが生き方だったらやらざるを得ない。そういう人がやるべきだ、と。そこにお金を結びつけると一般的な話として成立しなくなるからそういう覚悟のある人だけ来てくださいと。お芝居の役者さんと似た香りがしますよね。

川口 僕もやっぱり、やれって言えないですもんね。知り合いで役者やりたいって子がいたら。まあどっぷり浸かってたらもう仕方ないですけどね。

水上 まあ確かにね、劇団ってうちに来たら儲かるよっていって誘わないもんね。

川口 そんな劇団は嘘の劇団ですね。

一同 (笑)

竹清 でもまあ幸せの尺度はそれぞれ違いますよね。お金とは別で。

川口 まあそうですね。いろんな劇団がいっぱいあっていいと思います。

竹清 水上 (笑)

川口 僕、竹清さんとはフラットに話せるんですよ。演劇じゃないモノづくりをしている人と出会う事ってあんまりなくって。竹清さんと出会った頃はちょうど演劇関係のところに関わらないようにし始めていた時期だったんです。もっと東京の人とか関西の人とか、視野を広く持ちたいというか、福岡の事だけを考えないようにしていたんです。僕にとっては別のジャンルであるってことはすごく俯瞰できるというか、そこからどう見えているのかっていうのがすごく方位磁石だったというか。

竹清 それで思い出しました。福岡でやるメリットって確かにありますね。僕の個人的な感覚だと、業界からアウトローでいられるってことですね。メンタルさえちゃんと自分でコントロール出来ていれば予定調和なものを作らなくて済むし、ちょっとはみ出たものを作るチャンスがある。演劇とはこういうものだ、映像とはこういうものだっていうのが出来ているじゃないですか。でも、実際はそんなことない。むしろそうじゃないものの方が面白いこともある。そういう型にはまった定義みたいなものに対して自由なメンタルで居られる可能性が高くなると思いますね。東京以外の方が。

川口 東京は、若い演劇人なんかは特にちょっと芽がでると刈り取られていって、脚本書かされて、で上手くいかなくなったらポイって捨てられてしまう。でも東京に居たら、そこを目指さなきゃっていう気持にならざるを得ない。自分が意識しても巻き込まれていく。だから福岡みたいにちょっと離れた場所からちょっと俯瞰するのはメリットがあるって言えるんだろうなと思います。ただ居心地が良すぎてダメになるっていうパターンもあると思いますけど。

竹清 いや、ありますよー。

水上 そこは絶対陥ったらいけないとこだね。

川口 ホントですよね。

竹清 表現者としてはね。生活者としてはもう最高ですよ。

川口 そうですねー。東京の人の話とか聞くと、かわいそうになっちゃうときもあるから。ボロボロになって行っちゃう人もいるから。

竹清 えー?でもそれってチャンスじゃない?

川口 そうですね。でももう乗るか反るかですから、そこの勝負に戦い続けていかなければいけないみたいなことがあるんですけど、でもそれも幸せの尺度ですよね。

竹清 そうそう。

 

これからの10年?

 

川口 ある時急に、役者やってた子に、最近舞台出てないね。どうしたの?って聞いたら、地元に帰って農業やってるって、急にそんなことをやる気持ちになる流れってなんだろう。ちょっと想像もつかない。

竹清 すごい密度でがーっとチャレンジするんじゃないんですか。それで、納得してもうやりきったからいいや、ってなる気がする。

川口 もう二度と演劇はやらないんだっていう人もいて(笑)大変だったんだなーって思うし、あんなに演劇のこと大好きだったのにって思います。うまく立ち回るってことが出来るのも才能だとは思うんですけど、そういうことも含め色んなことが起きているのが東京だから。

水上 ここまでの話だと、福岡で長く続けることが目標じゃなくって、福岡で新しいことを始めることに重点を置いているってことなのかな。

川口 そうですね。福岡はその前線の基地としてすごくいい場所だなっていう感覚はあります。

竹清 じゃあ今後10年は色々新しいことを仕込む。

川口 色々やっていきたいですね。今までは劇団の規模を大きくしていくっていう一本やりでしかやってきてないので、この方法にも限界がみえてくるんですよね。作品を作って作品の宣伝をすることでお客様を呼ぶっていうやり方だからどうしたって伸び率は鈍くなっている、そこを打破するっていう観点から、違う切り口を考えていかないといけない。それは、他のジャンルとの関わりかもしれないし、違うところに作品を持っていくってことかもしれないし福岡だからこそできるある意味ミニマムなところに何か宝が埋まっているかもしれない。こういう視点を持つ作業はやっていかなきゃいけないと思いますね。もちろん作品創りはベースに持っていますが。

水上 例えば今は演劇でも凝った映像を作ったりしてるじゃないですか、ガラパもあると思いますけどそういう部分を竹清さんと一緒にやるとか。

竹清 そういう話もちょいちょいするんですよね。でもやる以上は商品だから、僕らがやりたいことじゃなくてお金を払ってでも観に行きたいっていう、観たいという部分まで計算してやらないといけないからね。まあ、やるならちゃんとしようとは思ってます。そういう話はしてますよね。

川口 そうですね。だから、10年ですよね。

竹清 10年とか言ってると映像なんてどうなってるかわかんないよ(笑)もう、やるならすぐでしょ。

水上 この公演が終わった次とか(笑)

no3-32.jpg川口 次はちょっと(笑)でも、それくらいの気持ちでね。スピード大事ですからね。

竹清 スピード大事。

川口 今まで、スピードを大事にしてこなかった、旗揚げ当初はサークル感覚でやってたものだからそこをないがしろにしてきてしまったのは大きな反省ですね。それがある種アマチュアの弱点。スピード=お金っていう感覚がないままやってきてるから、それはよろしくないことだな、と。竹清さんと仕事をやるようになってひしひしと感じた部分です。

竹清 僕むちゃくちゃ厳しいんですよ。広告業界でずっとやってるから、締切が仕上がりなんです。途中の仕上がりとかもね。仕事ですから。

川口 劇団って許されちゃう空間ですから、そうじゃないってことを感じることができて僕はぎりぎりよかったですね。これがあと10年くらい歳とったあとだったら手遅れだったんじゃないかなって思う。

水上 計画を立てるってことは大事ですよね。

川口 演劇は公演を打つ計画しかたててないですよね。当然劇場も押さえないといけないわけですから、一年二年のスパンで考えていますけど。ただ、それをやるって決めたらそれだけしか出来なくなっちゃうから、すごく効率が悪いことだなって思いますね。もっと密に出来ることが沢山あるはずなんだけど、年に二回公演をやるっていう決め事があると期間をフルで使おうと考えちゃうから、締切も許されちゃう。もうちょっとやり方を考えていかないとですね。

 

自分の作品に自信を持つこと

 

水上 ガラパは今何人いるの?

川口 劇団員は14人ですね。

水上 モンブランは15人。同じくらいですね。モンブランはそれで、みんなを食べさせてるんですね。

no3-43.jpg竹清 食べさせているというか、食べさせてもらっているというか(笑)まあ、僕らの仕事は半分はクライアントワークですからエンターテイメントとは種類が違うから一概には比べられないですよ。

水上 でも会社としての経営基盤があるからそれができるわけで。その部分なんですよね。ガラパの場合は日々色んな仕事とかアルバイトとかに縛られながら、年間2本くらいは死守してやってると思うから、公演以外の活動ができればいいですよね。

竹清 それができるのであれば、関係のないバイトよりはテレビ出ますとかテレビで番組やりますとか、そっちのほうがハッピーだよね。

川口 間違いなくそうですね。

竹清 その為にはリスクを冒して先ずはじめないと。誰もやってくれないですよ。

川口 本当にそろそろですよね。やっと今年で劇団も10年で第20回公演。ようやく、演劇公演の作品を作る以外の事をやってもいいのかなって思えてきましたね。特に最初の何年かは大学のサークルのノリでやっていたわけで、それがやっと5年位経った時に劇団として作品が認められたいって気持が生まれてきて、旗揚げして5年目で初めてイムズにいって。6年目で初めて東京に作品を持って行って。こういうことを重ねていって、やっと自分の作っているものがきちんとした商品になりうる可能性があるのかなと思え始めました。時間がかかってしまったとは思うんですけど。僕はずっと劇団をやろうと思って劇団を旗揚げしたつもりでもなかった人間で、特に自分が作るものに対しては自信がないタイプの人間なので、10年経って、やっとちゃんとしたものが作れてるのかなって思えるようになってきた。時間はかかったけど、人の目にさらされる時間が必要だった気もしています。そろそろ自信をもって違うこともやっていいんじゃないのって、ようやく自分を説き伏せることに成功してきましたね。

竹清 例えばなにやりたい?小説とか?

川口 小説とか書きたいですね。いやなんか、テレビとかもそうだし

竹清 出たい?

川口 あ、出たくはないかな。

水上 ドラマを書きたい?

no3-3.jpgのサムネール画像川口 そうですね、物語を書きたいです。それこそ商業みたいな舞台ですよね、まあタレントさんが出ている舞台でもいいだろうし。僕、そいういうものって別の次元のものだと思ってたんですよ。特に劇団始めた頃って、自分たち、いわゆる趣味で集まった劇団とタレントが出て何千円か払ってお客さんが観に来る作品っていうのは別のラインにあるものだと思っていたんです。でも実は別にそんなことはなくて自分の方法論で自分の作品の個性でお客さんを楽しませられるんじゃないかっていう自信は今ならあります。例えばそれがドラマだったとしてもそこに自分のカラーが乗せれる気はしなくもない。ようやくこういう風に思えるようになってきた。こう思えるようになったのは竹清さんと仕事をしたのが大きかったと思います。演劇の業界じゃないところから一緒に話をしていくうちに感じる共通している部分があったり。僕からしたら全然違う世界の人だったんですよ。話してみると決してそう遠い世界ではないんだ、と。僕が書いてきたものを竹清さんが面白いって言ってくれることが僕にとっては衝撃的な出来事でした。

水上 今の川口君の話を聞いてどうですか?

竹清 そう言ってもらえるのは僕も嬉しいです。一緒にやってて面白いですし、ちゃんと想像したものに向いた作品に話しをしながら近づいていく感じが楽しいです。川口くんは映像向いていると思いますよ。作り方とかもね。だからそっちにも広がるといいなと思いますね。そっちでまた川口君の名前がバーンと出たらガラパの公演にもお客さんが増えるかもしれないし、そうやってぐるぐるいい感じでまわるといいですよね。

川口 そうですね。すごく理想ですよね。

水上 それを確認するための今回だったんですね(笑)ガラパがやってきたことを職業化するようなところにいるんだなっていう印象を受けました。

川口 少なくとも昔よりはそういう視点を持つようになってきましたね。恐らく目をそらしていた部分もあったと思うんですよ。目指してしまうと挫折するのが怖いですからね。なんでもそうですけど。

竹清(笑)まあね、ぶっちゃけそうだよね。

川口 自分の作品に自信がなかったのが、今は少しは自信を持とうかなって思い始めてます。

竹清 川口くんの脚本は構成と構造をきちっと固めていくタイプだから難しいよね。書きなぐればいい、とかじゃないもんね。

川口 そうですね。つじつま合わないってことが致命的になるから。それも勢いで行けるもんだったらいいんですけどね。だから、書いてる量はすごい書いてると思います。台詞とかシーンとかは役者のみてない部分で結構書いてるんですけど実際に印刷されてくるのはほんのちょっとだったりしますよね。

竹清 ここで言っておきたい(笑)

川口 (笑)稽古場で言うのはちょっと恥ずかしいので、ここで言います(笑)でもホント、いつまでたっても難しいですね。

水上 クリエーターは一番の自信作は次の作品っていうもんね。

竹清 終わった瞬間にもう次ですからね

川口 なんか批評する自分の目の方がどんどん高くなっていくから嫌なんですよね。昔だったら面白いなって思って書けてたことが、いや、これはもうちょっといけるんじゃないかなって思う気持の方が強くなるからすごく苦しくなった。

水上 去年は昔の作品を4本再演しましたよね、昔の作品やって、どうでした?

川口 昔のやつは意外に面白いなって思いました。結構面白いこと考えてたなぁって思って。なんか技術的につたないなとは思ったんですけど、その時にしか書けない勢いみたいなものは確かにあるんだな、と。そういう意味ではそれもちょっと自信になった、信じて書くしかないなって(笑)それもその時なりに必死で考えて書いたものだから。だからなんか、取り組む姿勢としては変わんないんだなって思いましたね。上手くなったから楽して書けるとか、知識がついたら早くなるとか・・・

竹清 いやー、ないよねぇ・・・。

川口 ないですよねぇ・・・。それはある意味諦めがつきました(笑)もう戦うしかないんだろうなって。だから、大変ですね。未だに泣きそうになります(笑)なんも思いつかん、上手くいかんって(笑)でもきっと昔より自分に高いハードルを課してるから苦しいんだという風に思っているので苦しいのは正解なんだろうなって今は思ってますけどね。(笑)

 

来年の目標!

 

水上 そろそろ時間なんですが・・・来年あたり海外公演しますか。

竹清 いいですね(笑)観に行きますよ。

川口 そうですねぇ(笑)でも来年あたり、モンブラン・ピクチャーズと何か一緒にやりたいですね。

竹清 やりますか?まずプロットを書かないとね。

川口 じゃあプロット、企画書を書くってことを次の10年の目標で・・・

竹清 長いよ!次の10月までとかだよ(笑)

川口 わかりました。じゃあそのつもりで、年内に、書きます。でも、やっぱり言わないと始まらないですからね。

竹清 そう!やるって決めてやり始めると始まるんです。

川口 なんか投げてみるって大事ですよね。荒い球でもとりあえず投げるっていうのは癖にしておかないといけないなって、ひしひしと感じるので。じゃあ、今年から来年にかけてバンバン投げてくっ。

水上 きましたね。

川口 そうしましょう。そう、それが大事(笑)これが来年に向けての目標です。がんばります。

竹清 水上 しかと聞きました。

川口 映像にも残ってしまった(笑)ほんと、がんばります。

no3-111.jpg

2015.06.16

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